今回は、銀行交渉において、いわゆる「アウェイ銀行」を活用する方法を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

「担保・個人保証なしなら、借入を考えてもいい」

平成27年9月、
金融庁から新たな「金融行政方針」が各金融機関に配信されました。
そのなかの重点施策のひとつが、
「担保・保証に依存する融資姿勢を改める」です。
当然、既存の個人保証も外しなさい、という内容です。
しかし、現実には交渉しても、そう簡単には外しません。
それでも、
“やっと外れました!”という、嬉しい報告もあるのです。

 

中部地方のある企業でのことです。
3つの銀行からの借入があり、個人保証を外す交渉をしていました。
しかし、3つのA,B,C銀行とも案の定、
“持ち帰って検討します”の横並びで、進展がありませんでした。

 

そこへ飛び込みで、四国地方のD銀行が営業に来ました。
近くに支店ができ、あいさつ回りにきたのです。
で、“担保・個人保証なしなら、借入を考えてもいい。”
と、経営者は交渉しました。
四国から、というアウェイの弱みがるので、営業マンも必死です。
“わかりました!”
と元気よく帰り、1週間以内に、
“担保・個人保証なしでお貸しします!”との返事を持ってきたのです。
で、D銀行から実際に借りたのです。

 

当然、
経営者はその事実を、先のA,B,C銀行に伝えました。
“えっ、そうなんですか!”
「個人保証死守」という、
3銀行による暗黙の牙城を崩された各担当者たちは、
それぞれ焦りの表情を見せたそうです。
当然です。
このままでは、それぞれの融資がD銀行にとってかわり、
全額返済されるかも、しれないのですから。
担当者にとって、目先の融資シェアを奪われることは、
不良債権発生時のリスクを負うことよりも、
絶対に発生させたくない減点要因なのです。
しかも、アウェイの銀行にやられたとなったら、
なおのこと、担当者は言い訳に苦しむはずです。
担当者にすれば、「それだけは避けなければ!」となります。

まずは「理想の条件」を提示して様子を見る

で、続々と、
“私共でも、個人保証を外させていただきます。”
とやってきたのです。
しかも、
“なかなかOKが出なかったのですが、
ようやく了解を得ることができました。”
などと、いかにもずっと働きかけていたかのように、
もったいぶって言ったそうです。
本音は、自分の身を守りたいだけ、なのです。
これまで、個人保証を外す気など、なかったのですから。

 

経営者いわく、
“飛び込みできた銀行が役に立ちました!”
というわけです。

 

銀行交渉は駆け引きです。
その駆け引きに、
新参者のアウェイ銀行を活用する方法は、
大いにアリ、なのです。
飛び込みで来たからと言って、むげに追い払うのではなく、
まずは理想の条件をのめるかどうか、確認してみればよいのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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