不良債権化すれば、その担当者の減点対象に
平成27年9月、
金融庁から新たな「金融行政方針」が各金融機関に配信されました。
そのなかの重点施策のひとつが、
「担保・保証に依存する融資姿勢を改める」です。
当然、既存の個人保証も外しなさい、という内容です。
しかし、現実には交渉しても、そう簡単には外しません。
ある元頭取の方に、たずねてみました。
“金融庁が方針であげているのに、
どうしてなかなか既存の個人保証を外さないのですか?
外すと担当者の個人成績が減点されるんでしょうか?”
すると、次のような回答をいただきました。
“いやいや、外したからといって、個人の減点があるわけではありません。
ただ、外したあとで、もしその会社で不良債権が発生したら、
その責任は、外した担当者にいきます。
転勤があっても、その責任はずっと個人についてまわります。
だから、外したがらないんですよ。”
つまり、外した時点で減点はないものの、
不良債権化すれば、その担当者の減点対象になる、ということです。
しかもその責任は、その融資が完済されるまで、ついて回ります。
個人保証を外さずにおいておければ、不良債権化した場合、
その責任は、融資をした際の担当者についてまわります。
「持ち帰って検討させていただきます」
銀行員は転勤が多い職業です。
企業側から“これまでの個人保証を外してください。”
と交渉しても、その融資時の担当者は、すでに転勤している、
ということが多いのです。
過去の融資時の個人保証を外す、ということは、
前任担当者の融資の責任を自分が負う、ということになるのです。
現状の銀行内の出世レースは、点数がすべてです。
個人保証を外せば、減点に繋がるかもしれないタネが増えるのです。
担当者にすれば、そんな減点対象のタネを抱えたくないのは当然です。
しかも、自分ではなく、前任者の融資なら、なおのことです。
だから、なかなか個人保証を外したがらない、
というわけなのです。
“持ち帰って検討させていただきます。”
という、お茶をにごすような対応が、横行するのです。
しかし、だからとって、
融資を受けている企業側も、“しかたがない”
というわけにはゆきません。
各企業それぞれに知恵をこらして交渉し、
“外してもらいました!”
という報告をお聞きしているのです。
その内容は次回に・・・。