今回は、経営者の手腕が問われる「税引き前利益」のコントロールについて見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

設備を導入した場合のキャッシュフローを考える

経営に携わる立場の方とお話ししていると、
“えっ?”と思わされる発言に出会います。
かんちがい経営が、あちらこちらにあふれているのです。

 

古い機械や設備を無理しながら使っている状況を見て、
“新しい設備に変えたらいいじゃないですか?”
と言います。すると、
“いやあ…、設備は高いですからねぇ…。”
といった返事がきたりします。

あるいは、機械ができることを、人がやっている状況を見て、
“機械を導入すればいいじゃないですか?”
と言います。すると同じく、
“いやあ…、設備は高いですからねぇ…。”
といった返事を耳にすることがあります。

 

設備は高い、だから、古い設備のままでしかたがない。設備は高い、だから、人海戦術のままでしかたがない。この判断基準では、値段が高いか安いか、だけです。
で、高いから無理、となるのです。

減価償却のことまで考えている経営者は少ない!?

しかし、本当に高いのでしょうか?
この判断には、設備を導入した場合、キャッシュフローはどうなるのか?
ということが、抜け落ちています。設備は減価償却できます。その分、
キャッシュフローに貢献できるのです。

 

設備は高い、と言いますが、減価償却のことまで考えている人は、少ないです。
償却を増やし、税引き前利益を小さくすれば、法人税のキャッシュアウトが減ります。
その分、キャッシュが残るのです。単純に、高いとか安いとかで、判断すべきものではないのです。このかんちがいを、改めねばならないのです。

 

しかもH28年3月末までは、投資促進税制により、全額即時償却が活用できます。
建物、附属設備、機械、ソフトウェアなどに、活用可能です。
で、通常の減価償却にプラスオンされる特別償却分は、
決算書では、特別損失に計上できます。
だから、銀行が気にする、営業利益や経常利益が、大きく落ちることもありません。

 

H28年4月以降も、1年間は、基本は、取得額の50%が上限になりますが、
投資促進税制は、継続されます。

 

そろそろ、来年3月末の決算数字が読める時期です。税引き前利益をいかにコントロールして、キャッシュがより多く残るようにするのか?
今がまさに、経営者の腕の見せ所の時期なのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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