空室期間の長さが交渉を左右する
では、大家はどのようなときに条件交渉に応じるのでしょうか。
調査で最も多かった回答は「空室期間が長引いているとき」で、78.0%でした。入居者が決まらなければ、その間は家賃収入が得られません。募集を続ける期間が長くなるほど、条件を見直してでも入居につなげたいと考える大家が出てくるのは自然なことです。
ただし、空室期間が長いからといって、必ずしも値下げに応じてもらえるわけではありません。物件の立地や築年数、周辺の競合物件、維持管理にかかる費用など、判断に関わる要素は複数あります。家賃を下げるより、フリーレントや初期費用の調整を選ぶケースも考えられます。
また、交渉に応じる判断基準として「入居申込者の人柄・対応が良いとき」を挙げた割合は29.7%でした。条件だけでなく、申込者の対応も判断材料の一つになっていることがわかります。
賃貸契約は、契約を結べば終わりではありません。大家にとっては、その後も家賃の支払いが続き、物件を適切に使ってもらえるかどうかが重要です。問い合わせや内見の際に丁寧に対応することは、交渉以前に、貸主との信頼関係を築くうえで意味があります。
空室の多い時代、条件交渉は双方の事情を踏まえて
賃貸物件をめぐる需給環境も、交渉を考えるうえで押さえておきたい点です。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年10月時点の全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%でした。ただし、この数字には賃貸用や売却用の住宅だけでなく、別荘や長期間使用されていない住宅なども含まれます。全国の空き家率だけで、賃貸物件の需給状況を判断することはできません。
実際の交渉では、全国的な数字よりも、希望する物件の空室期間や周辺の募集賃料、同じエリアにある競合物件の条件などが参考になります。似た条件の物件が複数募集されていれば、家賃や初期費用を比較したうえで相談する余地があるかもしれません。
一方、駅に近い物件や人気の高いエリアなど、入居希望者が集まりやすい物件では、大家が条件を変更する必要性は低くなります。交渉が成立するかどうかは、借り手の希望だけでなく、貸主が置かれた状況にも左右されます。
入居者にとっては、毎月の家賃を抑えられれば、長期的な住居費の負担を軽くできます。大家にとっては、安定した家賃収入を確保し、空室期間をできるだけ短くすることが重要です。
条件交渉をする際は、単に「家賃を下げてほしい」と伝えるのではなく、周辺物件の賃料や希望する契約条件を踏まえ、何を調整してほしいのかを具体的に伝えることが大切です。フリーレントや初期費用の調整も含めて相談すれば、双方にとって受け入れやすい着地点が見つかる可能性があります。
[参考資料]
不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 ( けんびや )『入居申込時の条件交渉、大家の9割超が「状況次第で応じる」。応じやすい条件等は「フリーレント」、約3割が「人柄・対応」も重視。』

