(※写真はイメージです/PIXTA)

これまで「世界で最も安全な富裕層の資金避難先」として絶大な人気を誇ってきたドバイ不動産。しかし、2026年2月に勃発した中東情勢の緊迫化をきっかけに、市場には明確な「変化の兆し」が表れ始めています。取引件数の急減や一部エリアでの価格調整、さらには将来の供給過多や為替(ドル・円)リスクまで――。「買えば上がる」フェーズが終わりを迎える中、日本の投資家はドバイ不動産とどう向き合うべきなのでしょうか。最新のデータと現地情勢から、そのリアルな構造変化を読み解きます。

「安全な資産避難先」ドバイ不動産に訪れた決定的な転機

世界の富裕層マネーを引き付け、上昇を続けてきたドバイの不動産市場に転機が訪れている。

 

米国とイスラエルが2026年2月28日にイランへの攻撃を開始してから半年。イランは米軍関連施設などへの攻撃で応酬し、中東情勢は長期化の様相を強めている。

 

8月末時点でも戦闘は終息しておらず、ペルシャ湾岸諸国を取り巻く安全保障環境そのものが変化した。その影響を敏感に映しているのが、これまで世界の富裕層の「逃避先」として資金を集めてきたドバイの不動産市場である。

5年間続いた「ドバイ1強」

開戦前までのドバイ住宅市場は、文字通り活況を呈していた。英不動産大手ナイト・フランクによると、2025年の住宅売買件数は20万5400件と前年比18%増え、取引金額も25%増の5442億ディルハムと過去最高を更新した。1000万ドル以上の超高級住宅も年間500件売買された。

 

背景にあるのは人口増加だけではない。税負担の軽さ、外国人が不動産を保有しやすい制度、治安、航空ネットワーク、富裕層向けの教育・医療環境などが組み合わさり、欧州、ロシア、インド、中国などから資産家が流入した。日本の投資家にもドバイ物件を販売する動きが広がった。

 

ところが、今回の戦争はこれまでとは性格が違う。かつて中東で緊張が高まった際には、むしろ湾岸地域の資金が「安全なドバイ」に流れ込む側面があった。

 

しかし今回は湾岸諸国そのものが軍事衝突の影響を受ける。ドバイの最大の強みだった「中東にありながら安全」という前提に、投資家がリスクプレミアムを求め始めたのである。

売買件数が急減

数字には既に変化が表れている。CBREによると、2026年1~3月期のドバイ住宅取引はなお4万5000件を超えていたものの、3月には明確な減速が始まった。

 

4~6月期になると住宅需要が弱まり、取引件数も低下した。CBREは地域情勢による貿易、観光、航空などへの影響を理由に、UAEの2026年の経済見通しも引き下げている。第2四半期の住宅取引件数は約3万4850件。前年同期比31%減となったとの集計もある。

 

価格にも調整が広がっている。ドバイ土地局の取引データを基にした住宅価格指数では、2026年7月の住宅価格は前年比2.6%低下した。アパートは3.3%下落する一方、ヴィラは1.7%上昇しており、すべての物件が一様に値下がりしているわけではない。

 

一部では調整幅がさらに大きい。7月にはブルジュ・ハリファ周辺のアパート価格が前年同月比19%、ジュメイラ・ビーチ・レジデンスが15.1%下落したとの調査もある。つまりドバイ市場は、「何を買っても上がる市場」から、物件を選別する市場へ移りつつある。

 

 

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