「まだ一人でやれる」冷蔵庫を開けた娘に父が怒った理由
「まだ一人でやれる。放っておいてくれ」
そう声を荒らげたのは、77歳の正雄さん(仮名)です。
正雄さんは3年前に妻を亡くし、現在は地方都市の一戸建てで一人暮らしをしています。住宅ローンは完済しており、年金は月約16万円。生活費に困っている様子はありませんでした。
長女の美紀さん(49歳・仮名)は、車で1時間半ほど離れた場所に住んでいます。父とは週に一度ほど電話で話していましたが、仕事や家庭の都合もあり、実家を訪れるのは3ヵ月ぶりでした。
「電話ではいつも『元気だよ』『ちゃんと食べてるよ』と言うので、それほど心配していなかったんです」
その日も、正雄さんは普段と変わらない様子で娘を迎えました。
ところが、昼食を作ろうと美紀さんが冷蔵庫を開けると、気になるものが目に入ります。
同じ種類の豆腐が4丁、未開封の納豆が何パックも重なり、奥には賞味期限が1ヵ月以上前の食品が残っていました。野菜室には傷んだキュウリや葉物野菜もあります。
「お父さん、これ、いつ買ったの?」
美紀さんが尋ねると、正雄さんは「そんなに前じゃないだろう」と答えました。
台所の棚を確認すると、今度は賞味期限を半年以上過ぎたレトルト食品や乾麺が次々に見つかります。
「同じものばかり買ってるみたいだけど、どうして?」
「安いときに買っておいたんだよ。まだ食べられるものもあるだろう」
正雄さんは不機嫌そうに言いました。
確かに、賞味期限は未開封で表示された保存方法を守った場合においしく食べられる目安であり、期限を過ぎた食品が直ちに食べられなくなるわけではありません。ただ、冷蔵庫には傷んだ生鮮食品もあり、美紀さんは衛生面が心配になりました。
「傷んでいるものは捨てようよ。一緒に整理するから」
その言葉に、正雄さんは突然声を荒らげたのです。
「俺が何を食べようと勝手だろう。まだ一人でやれるんだから、放っておいてくれ」
美紀さんは驚き、いったん手を止めました。
以前の父は几帳面で、母が亡くなった直後も「家のことは自分でできる」と話していました。それだけに、目の前の台所と父の反応が、どうにも結びつかなかったといいます。
