受給開始は61歳…定年直前に判明した620万円の受取条件
帰宅後、正志さんは裕子さんに事情を説明しました。
「確定拠出年金、来年にならないと受け取れないらしい」
裕子さんは驚きながらも、こう尋ねたそうです。
「じゃあ、それまでのお金は足りるの?」
正志さんは答えに詰まりました。
預貯金は約1,100万円あり、退職一時金も約1,400万円受け取ります。すぐに生活に困る状況ではありません。ただ、これまで夫婦は企業型DCの620万円も含めて、退職後に使えるお金を考えていました。
さらに、正志さんは65歳まで働くかどうかを決めていません。妻もパート勤務を続けていますが、数年後には仕事を減らしたいと考えています。
厚生労働省『年金制度の仕組みと考え方』によると、2024年度末の企業型DC加入者数は862万人。個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者数も約363万人に上ります。確定拠出年金は、多くの人が利用する老後資金形成の制度となっています。
正志さんは改めて、企業型DCの受給開始年齢や受取方法を確認しました。
老齢給付金は受給要件を満たした後、一時金や年金形式など、制度で認められた方法で受け取れます。ただし、受け取りには請求手続きが必要で、60歳や61歳になれば自動的に銀行口座へ振り込まれるわけではありません。
また、受取方法によって税金の取り扱いも異なるため、退職一時金と合わせて税理士にも相談することにしました。
夫婦はまず、退職後5年間の生活費を試算。正志さんは再雇用制度を利用せずに退職する予定でしたが、必要に応じて短時間の仕事を探すことも検討しています。
「620万円がなくなるわけじゃない。だから焦る必要はないけど、制度を知らないまま予定を立てたのは失敗でしたね」
現在、正志さんは退職一時金と預貯金をすぐに使い切らないよう、年間の支出を確認しながら暮らしています。
なお、企業型DCでは退職後の状況によって資産の移換手続きが必要になる場合があります。特に60歳未満で退職して加入資格を失った場合などは、原則6ヵ月以内に移換手続きをしなければ、自動移換となることがあります。自動移換中は運用ができず、手数料が発生するほか、その期間が受給開始年齢を判断する通算加入者等期間に算入されません。
退職金や企業年金は、金額だけでなく、受け取れる時期や必要な手続きも確認しておきたいものです。特に勤務先が制度を変更した場合、加入期間が想像より短いこともあります。定年後の資金計画を立てる際には、企業型DCやiDeCoの残高とともに受給開始年齢を確かめ、実際に使える時期を踏まえて生活費を見積もることが重要です。
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