「3万円あれば助かるよ」母へ続けた7年間の仕送り
「来月からは、もう送らなくていいよ。自分のために使いなさい」
母からそんな連絡が届いたのは、亡くなる1ヵ月ほど前のことでした。
会社員の美紀さん(仮名・56歳)の母・和子さん(85歳・仮名)は、夫を亡くしてから地方の持ち家で一人暮らしをしていました。
受け取る年金は月約10万円。住宅ローンはありませんでしたが、固定資産税や光熱費、食費、通院費などはかかります。
美紀さんが仕送りを始めたのは、母が78歳のころでした。ある冬、電話で「今月は灯油代が高くてね」と聞いたことがきっかけです。
「毎月3万円送ろうか」
和子さんは最初、「そんなことしなくていい」と断りました。それでも美紀さんが「私も働いているし、そのくらいなら大丈夫だから」と話すと、「じゃあ、助かるよ」と受け取るようになりました。
以来、毎月3万円を母の口座へ振り込みます。7年間なら、単純計算で252万円です。
美紀さん自身にも住宅ローンがあり、大学生の次男にもお金がかかっていました。それでも仕送りをやめようとは思わなかったといいます。
「母はぜいたくする人じゃなかったので、月10万円で無理をしているんじゃないかと思っていました」
帰省すると、冷蔵庫には特売で買った食品が並び、服も長く着ているものばかり。
「ちゃんと食べてる?」
そう聞けば、母は決まって「食べてるよ。3万円も送ってもらってるんだから大丈夫」と笑いました。
ところが85歳になった春、和子さんは体調を崩して入院します。そしてある日、美紀さんに「来月からは、自分のために使いなさい」と連絡してきました。
美紀さんは「退院したらまた考えよう」と返しましたが、それが母との最後のやり取りになりました。数週間後、和子さんは亡くなりました。
