7. 取調べ手法の教育訓練
私が在籍していた当時の検察では、取調べの手法について、前述したとおり酒の席等での上司や先輩の話、警察から聞く話、個別事件ごとの上司の指導や先輩への相談で、それぞれ各自が研鑽を積んで習得していくものでした。
当時の検察においては、法務総合研究所で、自白その他の供述の信用性が争われた個別具体的な事案や個人の体験談的なものを素材として取調べ手法について研究し、執務資料のような形にまとめたものはあったと思いますが、心理学その他の隣接科学分野の知見を活用した取調べ技法の研究や教育で目立つものはなかったように思います※10。同僚の平尾覚弁護士によれば、英国では心理学の知見を活かした取調べ手法が長年にわたって研究され、取調官がステップアップするためには、模擬取調べを含めた研修を受ける必要があるそうです。英国は弁護人の取調べ同席が認められていますが、そのような中でも、英国の取調官は、取調べ技法を駆使して自白を得ようと努めているようです。
※10 公刊物としては、警察庁HPにおける警察庁刑事局刑事企画課 教本「取調べ(基礎編)」(平成24年12月)(https://www.npa.go.jp/sousa/kikaku/20121213/shiryou.pdf)が目につく程度です。
私も検察を離れてから時間がたっておりますので、現在の状況は分かりませんが、取調べ手法についての研究はあまり聞いたことがありません。例外は、幼い子どもや性被害・虐待などを受けた子どもの取調べ等の場面です。子どもは誘導や暗示の影響を受けやすい面がありますし、被害状況について質問されること自体によって被害体験を再体験しトラウマを深めてしまうおそれもあります。そのため、こうした被害者の聴取については、司法面接という方法※11が研究され運用されています。もっとも、司法面接を除くと、取調べ手法の研究はあまり進んでいないのではないかと思います。
※11 司法面接については、例えば、横浜地方検察庁刑事政策総合支援室パンフレット(https://www.kensatsu.go.jp/content/001332976.pdf)、法務総合研究所『令和6年版犯罪白書』第2編/第2章/第1節/コラム3(https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/71/nfm/n71_2_2_2_1_0_03.html)、仲真紀子「被害者からの聴取:刑事訴訟法第321条の3(新設)と司法面接」罪と罰60巻4号(2023年)16頁参照。
