過去の「取引データ」がないと多額課税のリスクも…適用開始までにすべき3つの準備
申告分離課税の実際の適用時期は、関連する改正法施行日の翌年1月1日以降の譲渡からとなる見込みであり、開始までにはタイムラグが存在します。制度の切り替えに向けて、投資家が今すぐ実施すべき具体的な対応は以下の3点です。
1. 多額の「含み益」を抱えている場合の対応
急ぎ資金を必要としない限り、今すぐ売却して利益確定を行うことは避け、新制度が適用されるまで保有を継続することが推奨されます。現時点で売却すると最高55%の税率が適用されますが、適用開始まで待つことで税負担を約20%へ抑えることが可能になります。
2. 現在「含み損」を抱えている場合の対応
新制度で導入される3年間の損失繰越控除は、制度適用開始「以降」に確定させた損失のみが対象となる見込みです。制度が始まる前に焦って損切りを行ってしまうと、その損失を将来の利益と相殺できず、単純な損失として終わる可能性が高くなります。法案の詳細が確定するまでは安易な損切りを控えることが懸念を回避する手段となります。
3. 過去の「取引履歴データ」の確実な保存
税制が変更されると、過去の取得単価の証明が厳格に求められます。利用している取引所が閉鎖されたりログイン不能になったりして取得単価を証明できない場合、税務上の原則ルールとして「売却金額の5%」しか取得費(経費)として認められないリスクが生じます。
たとえば、5,000万円で購入した暗号資産を1億円で売却した場合、本来の利益は5,000万円です。しかし購入価格を証明できないと、経費として認められるのは1億円の5%である500万円のみとなり、差額の9,500万円が利益と判定されて多額の課税が行われます。このような事態を防ぐため、利用しているすべての取引所から全期間のCSV取引データをダウンロードし、大切に保管しておく必要があります。
2026年度税制改正に備えて、正しい事前準備を
2026年度税制改正は、暗号資産を株式と同じ水準の投資対象へと引き上げる歴史的な転換点となります。最高税率が55%から約20%へ引き下げられ、3年間の損失繰越が認められることで、個人や経営者における資産運用の選択肢は大きく広がります。
しかし、税率引き下げの恩恵を受けられるのは国内の認可取引所に限定される点や、過去の取引履歴データの保存といった事前準備の重要性を正しく認識しなければなりません。
制度が実際に施行されるまでのスケジュールを把握し、安易な利確や損切りを避けながら合理的な準備を進めていきましょう。
黒瀧 泰介
税理士法人グランサーズ共同代表/公認会計士・税理士
