「思い出の品」をどうするか――米国流の「生前整理」と相続
もっとも、相続した家財の整理は、単なる不用品処分ではありません。ソファや食器、ランプ、時計など、一見するとマーケット・バリューがそれほど高くないモノでも、亡くなった親にとっては特別な思い出が詰まったアイテムかもしれません。
日本では、先祖代々受け継がれてきた家宝や家具など、「家」に紐づいた品物が残されるケースがあります。
一方、米国は移民の国です。祖父母や曾祖父母がヨーロッパなどから移住する際に持ってきた家具やアート、装飾品などが、世代を超えて受け継がれている家庭もあります。こうしたアイテムには、単なる金銭的価値だけでは測れない、ファミリーのヒストリーが詰まっています。
しかし、米国では引っ越しも比較的多く、リタイアを機に別の州へ移住したり、大きな家から小さな家へダウンサイジングしたりする人もいます。そうなれば、何十年もかけて増えた家財をそのまま持っていくことは難しくなります。
街を歩いていると、家の前や道路沿いで、家族が家具や日用品などを並べて販売している光景を目にすることもあります。これは単なる不用品処分ではありません。長年の生活のなかで増えてしまったモノを整理し、必要とする人に譲ったり、売却したりするという意味では、米国流の「生前整理」ともいえるのかもしれません。
親が亡くなった後、残された家財をどうするのか――。相続というと、預金や不動産、アートなど、「価値のある資産」を受け継ぐことに目が向きがちです。しかし実際には、家具、衣服、食器、趣味のコレクション、思い出の品など、「簡単には捨てられないモノ」をどう整理するのかという問題も、相続人にはついて回ります。
大量の家財をすべて子どもや孫が引き継ぐことはできません。だからこそ、米国では、アプレイザル、ドネーション、エステート・セール、バイアウト、オンライン・マーケットプレイスなど、さまざまな方法を使いながら、親が長年暮らした家に残された「モノ」と向き合っているのです。
奥村 眞吾
税理士法人奥村会計事務所
代表
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