「寄付すれば節税」ではない?
米国には寄付文化があり、相続したアートやコレクションをチャリティ団体などに寄付する人もいます。せっかくなら、必要としている団体に寄付しながら、税制上のメリットも受けたいと考えるのは自然なことです。
しかし、寄付したアイテムの価値を、そのまま寄付金控除の対象にできるとは限りません。アートなどを寄付する際には、いわゆる「related use rule(関連使用ルール)」が関係します。これは、寄付したアイテムが、受け取ったチャリティ団体の慈善目的に沿って使用されているかどうかを問うものです。
たとえば、ミュージアムにアート作品を寄付した場合、その作品が展示や教育目的で活用されるのであれば、慈善目的との関連性が認められる可能性があります。大学のアート・ヒストリー(美術史)分野などに寄付し、リサーチ目的で使用される場合も同様です。
一方で、寄付されたアートがチャリティ団体の目的に沿って使用されない場合には、通常のマーケット・バリューを基準とした寄付金控除が認められないケースがあります。
つまり、「高価なアートをチャリティ団体に寄付すれば、そのマーケット・バリュー分をそのまま節税できる」という単純な仕組みではありません。
チャリティ・オークションなら「実際の売却額」がポイントに
米国では、チャリティ団体のファンドレイジング(資産調達)のために、寄付されたアイテムをオークションにかけることも珍しくありません。
たとえば、子ども専門病院の資金集めのために、アート作品や高価なアイテムを寄付し、それをチャリティ・オークションで販売するケースです。この場合、病院がそのアート作品を展示したり、研究に使用したりするわけではありません。あくまで売却して、得られた資金をチャリティ活動に使うことになります。そのため、マーケット・バリューではなく、実際にオークションで売却された金額を基準に寄付金控除を考えることになります。
ここでも、寄付した側が「この絵には1万ドルの価値がある」と考えるだけでは十分ではありません。税務上のルールに基づいて価値を判断する必要があります。高価なアートやコレクションについては、IRS(米国内国歳入庁)もアプレイザルの妥当性を注視しています。
寄付金控除を受ける場合には、一定のケースでプロフェッショナル・アプレイザーによる評価などが必要になるため、相続したアートを寄付する際には、税務面も含めて慎重な対応が求められます。
