(※写真はイメージです/PIXTA)

自宅の引き出しや金庫を整理していたら、古い1万円札が出てきた――。そんな経験をした人もいるかもしれません。日本の1万円札は、1958年発行のものが聖徳太子、1984年発行のものが福沢諭吉、2024年発行のものが渋沢栄一です。現在でも、過去に発行された日本銀行券の中には有効なものがあります。そのため、何十年も使われずに家庭のなかで保管されている紙幣があっても不思議ではありません。こうした現金は、いわゆる「タンス預金」と呼ばれます。どれほどの金額が家庭に眠っているのかを正確に把握することはできませんが、数十兆円規模に達するとの推計もあります。国際課税研究所首席研究員の矢内一好氏が解説します。

「安心感」の裏側にあるリスク

現金を自宅に保管することには、もちろんメリットもあります。金融機関のシステム障害などが起きた場合でも、手元に現金があれば支払いに使えるという安心感があります。

 

しかし、自宅で多額の現金を保管することにはリスクもあります。

 

近年は、多額の現金を狙った盗難事件も報道されています。さらに、火災や水害などの災害によって現金そのものを失う可能性もあります。

 

タンス預金は、税務当局から見れば「相続財産をどのように把握するか」という問題です。一方、家庭にとっては、「現金という資産をどのように管理するか」という資産管理の問題でもあります。

「143兆円」の予算、その一方で水面下に眠る現金

こうした家計の資産を考えるうえで、冒頭の国家予算の話に戻ります。

 

2026年8月31日、2027年度予算の概算要求が締め切られ、要求総額は143兆円前後になる見通しとなりました。国家財政の規模が拡大する一方、日本の家計にも2,385.7兆円という巨額の金融資産があります。

 

「預金から投資へ」という流れが進むなかでも、日本人の現金志向は依然として根強いものがあります。

 

タンス預金は、単なる「家に置いてある現金」ではありません。相続税、資産管理、盗難や災害への備え、さらには現金をどのように社会の金融システムへ戻していくのかという政策上の問題まで、さまざまなテーマにつながっています。

 

表に出ている金融資産だけを見ていては分からない、水面下の「数十兆円」。その現金がどこにあり、なぜそこに置かれているのか。そして、次の世代にどのように引き継がれていくのか――。「タンス預金」は、日本の家計と税制を考えるうえで、決して無視できない存在なのです。

 

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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