相続で初めて「隠れた現金」が発覚することも
税の世界でタンス預金が問題になるのは、特に相続の場面です。
被相続人が自宅の金庫や引き出しなどに多額の現金を保管していたものの、相続人がその存在を知らなかったというケースがあります。
もちろん、現金も相続財産です。したがって、タンス預金であっても相続税の課税対象となります。
問題は、金融機関の口座に残された預金と違い、家庭に保管されている現金は、その存在自体を相続人が把握できないことがある点です。
たとえば、長年使われていなかった金庫から数百万円、あるいはそれ以上の現金が見つかった場合、その現金がいつ、どのように形成されたものなのかを確認する必要が出てきます。
タンス預金には、単純に「現金を手元に置いておきたい」という理由だけでなく、さまざまな事情があると考えられます。申告されていない所得など、いわゆる表に出しにくいお金が現金で保管されているケースもあれば、銀行に預けておくよりも「手元に現金があるほうが安心だ」という心理から保管されているケースもあります。
いずれにしても、相続が発生したときには、こうした「見えない現金」も相続財産として問題になります。
戦後日本では「新円切替」で現金を動かした
では、金融機関の外にある現金を把握し、金融システムに戻すことは可能なのでしょうか。
日本では、第二次世界大戦直後の1946年に、現在では考えにくいほど大胆な金融政策が実施されました。
1946年2月、金融緊急措置令と日本銀行券預入令が公布・施行され、預金封鎖と新円への切り替えが行われました。旧円を金融機関に預け入れさせ、旧日本銀行券の流通を停止するとともに、新円の引き出しにも制限を設けることで、戦後の急激なインフレを抑制しようとしたものです。
この政策では、一定額を超える現金を自由に使えなくすることで、家庭などに保有されていた現金を金融機関に集めることが可能になりました。
タンス預金という観点から見れば、非常に強力な「現金を表に出させる仕組み」だったといえます。
もっとも、当時と現在では経済環境も金融システムもまったく異なります。現在の日本で、同じような預金封鎖や新円切替が行われるという話ではありません。
