期中の役員報酬変更に課される税法上の厳格なルール
役員報酬の決定をさらに難しくしている要因が、税法によって定められた変更制限のルールです。
一度決定した役員報酬は、事業年度の途中において原則として変更することが認められていません。変更手続きを行うことができるのは、新しい事業年度が開始してから「3ヵ月以内」の期間に限定されています。この期間に決定した金額を、その後の12ヵ月間にわたって毎月同額で支給し続ける必要があります。
この制限が設けられている理由は、事業の途中で利益が予想以上に発生した際、役員報酬を自由に変更して利益を減らし、法人税の課税を意図的に操作することを防ぐためです。
このルールにより、期中に予期せぬ売上の減少や資金繰りの悪化に直面した場合でも、社長自身の給与を引き下げて会社のキャッシュを守るという柔軟な調整を行うことはできません。
ただし、例外として期中の減額が認められる事情も存在します。役員としての地位や職務内容に重大な変更が生じた場合、主要な取引先の倒産、著しい自然災害の発生といった、誰が見てもやむを得ないと判断される急激な業績悪化の事態に限り、変更が容認されます。
しかし、単に「今年の売上目標を達成できなかった」「手元の運転資金が不足してきた」という理由での減額変更は、一切認められません。高すぎる役員報酬を設定することは、会社経営全体の自由度を奪い、最終的に赤字転落を招くリスクがあります。
資本金の規模別に見る中小企業のリアルな役員報酬相場
多額の税負担や期中の変更リスクを考慮し、世間の中小企業の社長は、役員報酬を一定の範囲に抑えて設定する傾向があります。
国税庁が公表している令和6年の調査データから、資本金の規模に応じた役員報酬の年間相場は以下のようになっています。
・資本金2,000万円未満の企業:約700万円弱
・資本金2,000万円以上5,000万円未満の企業:約900万円前後
・資本金5,000万円以上の企業:約1,200万円前後
多くの社長がイメージするよりも、実際の役員報酬相場は控えめな金額に留まっています。
この結果は、経営者が税金や社会保険料の負担増を正しく把握し、意図的に支給額をコントロールしている実態を裏付けています。これに加えて、個人の所得を増やすことよりも、会社にお金を残して自己資本比率を高め、将来の成長投資に備えるという経営上の堅実な判断が反映されています。
