「節税効果を最大化」のはずが…経営者が「小規模企業共済」の掛金を“満額”にすると生じる課税リスク【税理士が解説】

「節税効果を最大化」のはずが…経営者が「小規模企業共済」の掛金を“満額”にすると生じる課税リスク【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

小規模企業共済は、社長や経営者の退職金作りに有効な制度であり、掛金を上限の満額に設定することで最大の節税効果を得られます。しかし、出口における税金の計算構造を理解していないと、受け取り時に税負担が生じるリスクも存在します。本記事では、税理士法人グランサーズ共同代表の黒瀧泰介氏が、掛金の「満額設定」によって100万円超の税負担が発生してしまう税務上の原因や、複数の退職金受け取り時に抵触しやすい複雑な年数ルールの実態について解説します。

iDeCoの併用で税金対策…「月3万5,000円」の積立手法

この出口における100万円規模の税金負担を避けるためには、目標とする退職所得控除の枠から逆算して、毎月の掛金を調整する手法が効果的です。

 

30年間の加入で退職所得控除枠が1,500万円となる場合、運用益を考慮すると「毎月の掛金を3万5,000円前後」に抑えることで、将来の受け取り総額をほぼ1,500万円以内に収めることができます。これにより、出口での税金を完全に無税に抑えつつ、全額を手元に残すことが可能になります。

 

では、もともとの希望であった「月7万円の積立による節税メリット」を維持するためには、どうすればいいのでしょうか。その解決策として、小規模企業共済を無税枠の3万5,000円に抑え、残りの3万5,000円を「iDeCo(個人型確定拠出年金)」へ移し替えて併用する手法が推奨されます。

 

iDeCoも小規模企業共済と同様に、掛け金の全額が所得控除の対象となり、受け取り時には退職所得控除が適用されます。さらに、小規模企業共済の予定利率が1%と手堅く設定されているのに対し、iDeCoはさまざまな運用商品のなかから自身で選択して非課税で運用できるため、複利効果を活用して効率的に資産を増やすことが期待できます。

 

2026年12月にはiDeCoの掛金上限額の引き上げが予定されているため、両者を組み合わせた資産形成の自由度はさらに高まります。

役員退職金の受け取りで抵触しやすい「厳しい年数制限ルール」

小規模企業共済、iDeCo、そして会社から支給される役員退職金のすべてを組み合わせる場合、税務調査において退職所得控除の枠が削られないよう、受け取りのタイミングに細心の注意を払わなければなりません。

 

実は、退職所得控除は小規模企業共済だけで個別に使える特別な枠ではなく、iDeCoや役員退職金のすべてで「同一の1つの枠」を共有するルールになっています。

 

何も考えずに同じタイミング、あるいは近い時期に複数の退職金受け取りを行うと、控除枠が重複して相殺され、手取りが大きく減少するリスクがあります。具体的には、以下の厳しい年数ルールが定められています。

 

10年ルール(2026年1月改正)

iDeCoに代表される確定拠出年金を先に一時金で受け取り、その後に会社の退職金や小規模企業共済を受け取る場合、受け取りの間隔が「10年以内」であると、退職所得控除の枠が大幅に削られます。かつては5年以内という制限でしたが、2026年1月の税制改正によって10年以内へと期間が延長され、より厳格化されました。

 

20年ルール

逆に会社の退職金を先に受け取り、あとからiDeCoを受け取る場合、間隔が「19年以内」であると、控除の枠が削られてしまいます。実質的に20年もの長い期間を空ける必要があり、一般的な現役引退のスケジュールを考慮すると現実的ではありません。

 

iDeCoが絡まない場合のルール(5年)

iDeCoを組み合わせず、小規模企業共済を先に受け取ってから会社の役員退職金を受け取る場合であれば、従前通り「5年間」の間隔を空けるだけで、それぞれの退職所得控除の枠を削られることなくフル活用できます。

 

次ページ退職所得控除を最大限に活用する「5年刻み」の出口戦略

※本記事は、YouTube『社長の資産防衛チャンネル【税理士&経営者】』より動画を一部抜粋・再編集したものです。

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