(※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職を迎えると、家庭で過ごす時間も大きく変わります。それまで平日の多くを職場で過ごしていた人が家にいるようになれば、食事や掃除など日々の家事についても、これまでと同じ分担のままでいいとは限りません。夫の退職を機に、暮らし方を見直した夫婦のケースをみていきます。

「手伝う」ではない…夫婦で決め直した家事の分担

翌朝、正志さんが起きると、和美さんはすでにパートへ出る準備をしていました。

 

「お昼は冷蔵庫にあるもので自分でお願いね」

 

これまでなら、和美さんが何か用意して出かけることが多かったといいます。正志さんは最初、少し戸惑いました。

 

昼になり、冷蔵庫を開けてもすぐ食べられるものはありません。結局、卵を焼き、冷凍ご飯を温めて昼食にしました。

 

「昼飯一つでも、自分でやるとなると考えるんですよね。今まで妻が自然にやっていたから、そこに手間があることを意識していませんでした」

 

その週末、夫婦は家事を具体的に書き出しました。食事の準備、食器洗い、洗濯、風呂掃除、掃除機がけ、ゴミ出し、日用品の買い出し。

 

正志さんは当初、「じゃあ手伝えることはやるよ」と言いました。すると和美さんは、「手伝うじゃなくて、自分の担当にしてほしい」と返しました。

 

そこで、朝食は各自で準備し、昼食もそれぞれで済ませることにしました。夕食は和美さんが作る日を基本としつつ、週2日は正志さんが担当。風呂掃除とゴミ出し、週2回の掃除機がけも正志さんの役割にしました。

 

最初からうまくいったわけではありません。

 

正志さんが夕食を担当した日に、食材を必要以上に買い込んだり、洗濯物の干し方をめぐって和美さんと意見が合わなかったりすることもありました。

 

「妻からすると、今まで自分がやっていた方法があるんですよね。僕も『やってるんだからいいだろう』じゃなくて、一緒に暮らすなら相談しないといけないんだと分かりました」

 

一方、和美さんにも変化がありました。

 

以前はパートのない日でも、「昼には夫が帰ってくるから」と予定を調整することがありましたが、今は友人とのランチや習い事に出かける日が増えています。

 

正志さんも家事以外に、地域のスポーツセンターへ通い始めました。

 

退職した夫が家事をどの程度担うべきかに、一律の答えがあるわけではありません。夫婦の就業状況や体調、これまでの役割によって、無理のない形は異なります。

 

ただ、退職によって一方の在宅時間が大きく増えるのであれば、これまでの家事分担をそのまま続けるのではなく、生活の変化に合わせて見直す余地も生まれます。

 

正志さん夫婦の場合、退職を境に「妻が家事をする生活」から、「二人で暮らしを回す生活」へ少しずつ変わりました。最終出勤日は、会社員生活が終わった日であると同時に、夫婦の新しい生活が始まった日にもなったのです。

 

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