“社内左遷”へ…「退職か、残るか」迫られた決断
部下たちは中沢さんの指示に従わなくなり、必要な報告や相談も最低限に。チームとしてのまとまりは崩れ、会社側も中沢さんをこれまでと同じように管理職として置いておくことが難しくなっていきました。
「それで……営業部長から、サポート部門に異動しないかと言われたんです。役職がなくなり、年収は680万円になると。つまり社内左遷ですよ。悔しくて震えました。そんな扱いを受けてまで、しがみついていられるわけがない。そう思ったんですけどね」
それでも、退職という選択肢には踏み切れませんでした。53歳。ここで会社を辞めて、いったい自分に何ができるのか。退職金も満額にはならず、住宅ローンも残っています。
子どもの教育費もかかる。若手社員のように、「環境を変えて一からやり直そう」と簡単に会社を飛び出せる年齢ではありません。
「辞める勇気はなかった。会社にしがみつくしかない、というのが正直なところでした」
異動が決まっても、部下からねぎらわれることも惜しまれることもなく、静かに10メートル先のサポート部門に異動しました。新しく営業部長になったのは、30代で売り上げトップだった元部下。和気あいあいとした空気で、チームの雰囲気は一変していました。
現在も中沢さんは、サポート部門で静かに働いています。以前のような肩書も、年収も、部下を率いる立場もありません。そこで中沢さんは、“変われなかった自分”が外からどう見えていたのか、少しずつ実感するようになったといいます。
時代が変われば、上司に求められるものも変わります。厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査報告書(令和5年度)」によると、過去3年間にパワハラの相談があったと答えた企業は64.2%(前年比+16.0%)。いわゆる「パワハラ防止法」(改正労働施策総合推進法)は全企業が対象になり、管理職などの言動に会社も敏感になっています。
自分が成功した方法にしがみつくのではなく、部下の価値観や働き方の変化を受け止め、自分自身も変わっていく。そんな柔軟さが、長く働き続けるうえで必要なものなのかもしれません。
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