102歳の祖母の相続。子どもたちは「もう財産はいらない」
今回の相談者は、40代女性のNさんです。Nさんが相談に来られたきっかけは、当時102歳で入院していた父方の祖母の相続でした。
祖母の法定相続人は2人。実子であるNさんの父親と、祖父母と早くに養子縁組をしていたNさんの母親です。
2人ともすでに70代で、約10年前に祖父が亡くなった際には、アパートや駐車場、金融資産などをそれぞれ相続していました。現在、父親は約1億円、母親も約8,000万円の資産を保有しています。
そのため、2人には共通する思いがありました。
「自分たちは、これ以上財産をもらっても使い切れない。それなら、毎日のように祖母の家に通って食事や身の回りの世話をしてくれている孫たちや、ひ孫たちに引き継いでもらいたい」
そこで家族が考えたのが、「自分たちが相続放棄をすれば、そのまま孫へ相続権が移るのではないか」という方法でした。
しかし、相続放棄をすると、その人は法律上「初めから相続人ではなかった」と扱われます。そのため、子どもが相続放棄したことを理由に、その子である孫が代襲相続人になるわけではありません。
子どもが全員相続放棄した場合には、次順位の直系尊属へ、それもいなければ兄弟姉妹へ相続権が移ります。兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合には、その子である甥・姪が代襲相続人となります。
つまり、「相続放棄をすれば孫に渡せる」という考え方では、家族が望んでいる形にはできないのです。
さらに、相続人が全員相続放棄するなどして最終的に相続する人がいなくなった場合には、相続財産清算人による債務の支払いなどの手続きを経て、残った財産が国庫へ帰属することもあります。
そこでNさん一家は、祖母の意思がはっきりしているうちに、希望する人へ確実に財産を引き継ぐ方法を検討することにしました。
【資産構成】祖母が守ってきた約2億円の資産
祖母が保有していた財産は、総額約2億円です。
・不動産:約4割
自宅の土地、周辺の駐車場など
・金融資産:約6割
預貯金など
祖父から相続した財産を大切に守りながら、102歳まで維持してきた資産でした。
課題① 70代の子どもが相続することで生じる「二次相続」
もっとも大きな課題は、すでに十分な資産を持っている70代の子ども世代が、祖母の約2億円の財産をそのまま相続することでした。
父親には約1億円、母親にも約8,000万円の資産があります。
そこへ祖母の財産が加われば、いずれ父親や母親に相続が発生した際、今度はNさんたち子ども世代が相続することになります。
相続税は、取得する財産が大きくなるほど税率が高くなる累進課税です。
祖母から子ども、さらに子どもから孫へと短期間に相続が続けば、家族全体で見た税負担が大きくなる可能性があります。
課題② 「相続放棄をすれば孫へ渡る」という誤解
もう1つは、相続放棄についての誤解でした。
父親と母親が相続放棄をしても、Nさんたち孫が当然に相続人になるわけではありません。
家族だけの判断で手続きを進めてしまえば、想定していなかった親族が相続人となる可能性もあります。
祖母の財産を誰に、どのように残したいのか。その意思を法的に明確にしておく必要がありました。
課題③ 102歳という年齢と「意思能力」
そして、もっとも急がなければならなかったのが祖母の年齢です。祖母は102歳。当時は体調を崩し、病院に入院していました。
遺言書を作成するには、本人が遺言の内容を理解し、自分の意思で決められる状態であることが重要です。
あとになって「本人には判断能力がなかったのではないか」といった疑義が生じないよう、公証人にも本人の意思を直接確認してもらえる公正証書遺言を作成することにしました。
