お父さん、ごめんね、でも…父から受け継いだ〈借地権付き自宅・アパート〉を手放す決断。資産を組み替えた60代女性が「相続税233万円減」よりうれしかったこと【相続実務士が解説】

お父さん、ごめんね、でも…父から受け継いだ〈借地権付き自宅・アパート〉を手放す決断。資産を組み替えた60代女性が「相続税233万円減」よりうれしかったこと【相続実務士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

父から相続した自宅とアパートは、どちらも借地権付き。長年大切に守ってきた財産ですが、60代になったYさんは、娘たちにそのまま残すことに不安を感じるようになりました。地主との関係や建物の老朽化、ご主人の老後も気がかりです。借地権を次世代に残さず、家族が安心できる資産へ組み替える方法について、相続実務士・曽根惠子氏が実例をもとに解説します。

【相談者の事情】父から受け継いだ「借地権」を娘たちに残したくない

Yさん(60代・女性)は、お父さんから相続した借地権付きの自宅に長年暮らしてきました。

 

自宅の隣には、同じくお父さんが建てた借地権付きの収益アパートがあり、そこから得られる家賃収入は、長年家族の生活を支えてきました。お父さんが残してくれた大切な財産です。しかし、年月が経つにつれて、Yさんはこの不動産をそのまま子どもたちへ残してよいのかと考えるようになりました。

 

自宅もアパートも、土地そのものを所有しているわけではありません。借地権のため、更新や譲渡、建替えなどの際には、地主さんとの協議や承諾が必要になる場合があります。さらに、収益アパートは築年数が経過し、今後は修繕や管理の負担が増えていくことも予想されました。

 

Yさんにはご主人と2人の娘さんがいます。長女は独身、次女は結婚して2人の子供がいます。

 

「父が残してくれた財産ですから、大切にしたいという気持ちはあります。でも、子どもたちに借地権という負担まで残したくありません」

 

Yさんが心配していたのは、それだけではありません。

 

ご主人の老後の生活費や、将来的な介護費用も必要です。そして、自分たちが亡くなったあと、2人の娘さんが財産を巡って揉めることなく承継できる形にもしておきたいと考えていました。

 

そこでYさんは、「元気なうちに資産全体を見直しておきたい」と相談に来られたのです。

【資産構成】自宅も収益アパートも「借地権」

相談時、Yさんの主な財産は次のとおりでした。

 

・借地権付き自宅
・借地権付き収益アパート
・預貯金

 

一見すると、自宅に加えて家賃収入を得られるアパートもあり、老後の資産として問題がないようにも見えます。

 

しかし、最大の課題は、自宅も収益アパートも「借地権」であることでした。借地権そのものは相続できる財産です。

 

一方で、相続したあとも地主さんとの関係は続きます。更新や譲渡、建替えなどの際には地主さんとの協議が必要になることもあり、所有権の土地や建物に比べ、自由に処分しにくい面があります。

 

つまり、このまま相続すれば、Yさんが抱えている管理や交渉の負担を、そのまま娘さんたちへ引き継がせることにもなりかねません。

【課題の整理】「借地権」だけを解決しても意味がない

そこで、Yさんの資産と家族の状況を整理し、主に次の課題があると考えました。

 

1つ目は、借地権を次世代へ残さないことです。

 

2つ目は、築年数の経過した収益アパートの修繕や管理負担を軽減すること。

 

3つ目は、ご主人が年金だけに頼らず、老後の生活費や将来の介護費用を確保できるようにすることです。

 

そして4つ目が、娘さん2人にできるだけ公平で、分けやすい財産を残すことでした。

 

つまり、今回解決しなければならないのは、単に「借地権をどうするか」という問題ではありません。

 

住まい、老後の収入、管理、相続まで含めて、家族全員が安心できる資産へ組み替える必要があったのです。

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