「祖父名義の土地を、自分の代で整理したい」
「昭和41年に亡くなった祖父名義のままになっている実家の土地を整理し、売却してすっきりさせたいのです」
そう話して相談室に来られたのは、70代女性のFさんです。
Fさん自身も高齢期を迎え、「生きているうちに実家や親族の問題を整理しておきたい」と強く考えるようになっていました。
対象となる不動産は、神奈川県内の市街化調整区域にある約143坪、約475㎡の宅地です。固定資産税評価額は約863万円あります。
ところが、登記簿上の名義人は、昭和41年に亡くなったFさんのおじいさんのまま。実に60年近く、相続による名義変更が行われないままになっていました。
敷地内には古い家があり、現在はFさんの弟さんが1人で暮らしています。
しかし弟さんは体調を崩し、仕事を続けられなくなっていました。現在は生活保護を受給しながら暮らしており、今後の生活にも不安を抱えています。
ご両親の代から家族の介護や身の回りのことを担ってきたFさんは、弟さんの生活についても心配していました。
「弟がこのまま不安定な状態で暮らすのは忍びない。自分たちが元気なうちに、この古い土地と建物を処分したい。滞納している固定資産税もきれいに精算して、弟が安心して暮らせる住み替え先も確保したい」
そして何より、
「自分たちの代で、この不動産の問題を完全に終わらせたい」
というのがFさんの希望でした。
約143坪の土地でも、売却見込みは1,500万円
対象となる土地は約143坪と広さがありますが、市街化調整区域にあります。
市街化調整区域では、建物の建築や用途などに制約があります。今回の土地も、面積が広いからといって自由に分割し、複数の住宅を建てられるわけではありません。
そのため、固定資産税評価額は約863万円、土地の広さは約143坪あるものの、売却価格は1,500万円程度にとどまると見込まれました。
さらに、固定資産税には過去約5年分の未納がありました。
現在はFさんが自治体の窓口と相談し、1回あたり1万円ずつ立て替えて納付を続けています。
仮に1,500万円で売却できても、そこから建物の解体費用や固定資産税の未納分、相続手続きにかかる費用などを支払わなければなりません。加えて、弟さんが現在の家を出たあとの住み替え費用も確保する必要があります。
しかし、売却に進む以前に、まず解決しなければならない大きな問題がありました。
60年近くの間に相続が重なり、相続人は34人に
おじいさんが亡くなった昭和41年から現在まで、60年近い年月が経過しています。
その間に、おじいさんの子ども世代が亡くなり、さらにその子ども、孫世代へと相続権が引き継がれる「数次相続」が何段階にもわたって発生していました。
その結果、相続権が複雑に枝分かれし、Fさん自身も「現在、誰に相続権があるのか」を把握できない状態になっていました。
不動産を売却するためには、まず現在の相続人を正確に特定しなければなりません。
そこで司法書士に依頼し、おじいさんの親の代までさかのぼり、戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍などを全国の自治体から取り寄せて確認することになりました。さらに、過去に家庭裁判所で相続放棄をした人がいるかどうかも確認する必要があります。
戸籍を集めるだけでなく、家庭裁判所への照会も行い、現在の相続関係を1つずつ明らかにしていきました。
