お願いだから揉めないで…次男には3,000万円超を援助、頼れる長女は海外在住。3人きょうだいの将来を案じた母が生前に打った「相続対策」【相続実務士が解説】

お願いだから揉めないで…次男には3,000万円超を援助、頼れる長女は海外在住。3人きょうだいの将来を案じた母が生前に打った「相続対策」【相続実務士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「私が死んだあと、子どもたちが遺産の分け方で揉めないよう、今のうちに決めてあげたい」──。そう話すのは、長男、次男、海外で暮らす長女の3人の子どもを持つOさんです。きょうだいの関係は良好でも、過去の資金援助や土地と建物の名義の違いなど、相続後のトラブルにつながりかねない火種がいくつもありました。子どもたちに争いを残さず、財産を公平に引き継ぐにはどうすればいいのでしょうか。相続実務士・曽根惠子氏が、実例をもとに解説します。

今回の相談者であるOさんは、子ども思いのご高齢の女性です。お子さんは長男、次男、そしてアメリカに住む長女の3人です。

 

「私が死んだあと、子どもたちが遺産の分け方で揉めないよう、今のうちに決めてあげたい」

 

Oさんが私たちのもとを訪れたのは、そんな強い危機感からでした。年齢の近いきょうだいは、それぞれしっかりとした考えを持っている一方、いざ意見がぶつかると、互いに譲らない頑固な一面もあります。

 

そのなかで、Oさんが最も信頼しているのが長女です。長女は「きょうだいで平等に分けるから私に任せて」と言ってくれていますが、現在は医師として海外で暮らしており、帰国は年に1回あるかないかという状況です。

 

「いくら信頼していても、海外にいる娘にすべて任せてしまっては、日本にいる息子たちとの手続きがスムーズに進むとは限りません。それに、今はうまくいっていても、私がいなくなれば、それぞれのお嫁さんの考えも絡んで、関係がどう変わるかわかりません」

 

親だからこそ感じ取れる、家族関係の微妙な変化があります。Oさんは、自分が元気なうちに、子どもたちが納得できる明確な道筋をつけておく必要があると考えていました。

 

敷地内に4つの建物 自宅・次男の家・アパート・テラスハウス

Oさんが所有する土地には、4棟の建物が建っています。

 

1.自宅 夫婦2人暮らし
2.次男の家 Oさんの土地に、次男が自宅を建てて暮らしています
3.アパート 6世帯のアパートが建っており、連帯保証人は長男です
4.テラスハウス 3世帯のテラスハウスで、建物は次男名義です

 

一見すると、十分な資産があり、生活に困るような状況ではありません。しかし、この「不動産の持ち方」と「これまでの経緯」のなかに、将来の相続トラブルにつながりかねない問題が潜んでいました。

10年前の税理士の助言と、浮き彫りになった「3つの課題」

Oさんの資産状況と家族関係を整理したところ、大きく3つの課題が見えてきました。

課題①:10年前の助言をそのまま信じ続けていたこと

Oさんは10年前、地元の税理士から「地価が高いから、今売ると譲渡所得税がものすごくかかる。絶対に売らないほうがいい」と言われていました。

 

そのため、不動産を売却せずに保有し続けてきましたが、その後、相続税の基礎控除が引き下げられ、さらに路線価も上昇しました。その結果、当時とは状況が変わり、気がつけば多額の相続税がかかる可能性のある資産構成になっていたのです。

 

課題②:次男への「3,000万円超の資金援助」が不公平感の火種になる可能性

Oさんは過去に、次男へ3,000万円以上の資金援助をしていました。

 

次男本人は「土地はいらない」と話していますが、現時点では口約束に過ぎません。

 

長男夫婦からすれば、「次男はすでに多額の援助を受け、親の土地に家を建てて暮らしている。そのうえ、相続でも同じように財産を受け取るのか」と不公平感を抱く可能性があります。

 

今は問題になっていなくても、相続が発生したときに、過去の援助がきょうだい間の対立の火種になることが懸念されました。

課題③:「土地と建物の名義が異なる」ことで将来トラブルになる可能性

次男の自宅が建っている土地はOさん名義ですが、建物は次男名義です。

 

このまま土地を長男や長女が相続すると、次男は他のきょうだいが所有する土地の上に自宅を持つことになります。現在は地代を払わない「使用貸借」の状態ですが、将来、相続が重なって次の世代、つまりいとこ同士の関係になったときには、土地の返還や利用方法を巡って揉める可能性があります。

 

土地と建物の所有者が異なる状態をそのまま次の世代へ持ち越すことは、不動産を動かしにくくする大きなリスクになります。

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