【マンション管理士の助言】管理会社の変更は“対症療法”…資産価値を守るために必要な視点
このマンションの資料を確認すると、管理会社の撤退以前から、Aさんたち管理組合自身が多くの課題を抱えていました。
長期修繕計画は15年前のまま更新されず、修繕積立金も国土交通省のガイドラインを下回っていました。管理規約は竣工以来、一度も改正されず、必要な工事も「費用がかかる」という理由で先送りに。その結果、建物や設備の劣化が進み、管理計画認定制度の認定基準も満たしていなかったのです。
こうした問題は、管理会社を変更しただけでは解決しません。必要な修繕を実施するか、修繕積立金を見直すかを最終的に決めるのは管理組合だからです。
管理組合自身の意思決定に問題があれば、管理会社の変更は一時的な「対症療法」に終わってしまいます。
管理会社を長期的な協力相手に
もちろん、管理委託費や業務内容を検証し、不要な支出を見直すことは必要です。しかし、価格だけを基準に必要な業務まで削れば、管理の質が低下し、建物や設備の劣化につながります。
管理会社が管理員や清掃員、フロント担当者を配置し、安定したサービスを提供し続けるには、適正な利益が必要です。管理会社の利益を削ることが、そのまま管理組合の利益になるとは限りません。
マンション管理の主体は管理組合ですが、管理会社は日常管理や会計、設備点検などを担う重要な協力相手です。
管理会社に何をしてもらうかだけではなく、管理会社とどのような関係を築き、協力してマンションを維持していくか。管理会社の撤退が現実的な問題となった今、こうした視点を持つことが、マンションの管理水準と資産価値を守るうえで、ますます重要になっています。
松本 洋
松本マンション管理士事務所代表
