「もし合わなかったら」という時の選択肢
東京へ戻る準備を始めたころ、隣の女性から「帰っちゃうの? 寂しくなるね」 と声をかけられました。陽子さんが「いろいろありがとうございました」と頭を下げると、「また、いつでも遊びに来てね」と笑いました。
その笑顔を見て、陽子さんは胸が詰まったといいます。
公益社団法人ふるさと回帰・移住交流推進機構によれば、2025年の移住相談は過去最多、初めて7万件を突破。移住への注目度が上がっていることがうかがえます。地「移住してよかった、成功だった」……そう思う人も多いでしょう。
とはいえ、地方移住を考える際には、家の価格や自然環境だけでなく、交通、買い物、医療、地域との付き合い方などを事前に確認することが大切です。そして、移住には家の購入費だけでなく、リフォーム、家具・家電、車、引っ越しなど、さまざまな費用がかかるため、資金の準備も欠かせません。
また、どんな準備をしても、実際に暮らしてみて「合わない」と思う可能性はゼロにはなりません。都会では「人が冷たい」と感じていた陽子さん。ところが島で暮らしてみると、今度は「人との距離が近すぎる」と感じました。そして、想像していたはずの不便さも、実際に暮らしてみたら思いのほか大きなストレスになりました。
そのため、いざという時の選択肢を残しておくこと。陽子さん夫婦には経済的な余裕があったため、損失を受け入れてでも東京へ戻ることができました。もし老後資金に余裕がない状態で移住していたら、「戻りたいけれど、戻るお金がない」という事態に陥る可能性もあったのです。
老後の住まいは、これから何十年と暮らす場所です。移住先の環境、お金、そして万が一戻ることになった場合の費用まで含めて、慎重に考える必要があります。
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