(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢親の一人暮らしを危うく思ったとき、選択肢にあがる高齢者施設への入居。昨今では種類も多様化し、高級志向の老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など、需要に合わせた施設が増えています。しかし、その人の需要に合った施設を見極めるのは簡単ではないようです。本記事では、波多FP事務所の波多勇気氏が、文枝さん(仮名)の事例から、サ高住入居にあたって見落としがちなポイントと老後の住まいを選ぶ際の注意点について解説します。※紹介する事例は、相談者より許可を得て、プライバシー保護の観点から相談者の個人情報および相談内容を一部変更して記事化しています。

サ高住はどんな施設なのか?

「私が間違っていたんでしょうか。サ高住なら安心だと思ったんです」

 

真剣な眼差しで訴える隆志さんに対し、筆者は次のようにアドバイスしました。

 

「隆志さんの考えは自然なものですよ。ただ、一つ整理しておきたいのは、サ高住は介護施設ではなく、あくまで賃貸住宅だという点です。法律で義務付けられているのは、安否確認と生活相談の2つだけ。食事や介護は基本的にオプションか外部サービスです。つまり、見守ってはくれますが、暮らしの張り合いまで用意してくれる場所ではないんです」

 

「たしかに、パンフレットに書かれている設備のよさばかり見ていました」

 

「サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)」は2011年に登録制度が始まった比較的新しい住まいで、2026年3月末時点で全国8,337件・約29万戸まで増加しています。

 

国土交通省「令和5年8月末時点の登録情報集計」によると、家賃・共益費・サービス費を合計した基本費用の全国平均は月約11万円。食費なども含めた実際の月額費用は、民間の調査では中央値で16万円台半ばというデータもあります。

 

一方、受け取る側の年金はどうでしょうか。厚生労働省「令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(基礎年金含む)の平均月額は男性16万9,967円に対し、女性は11万1,413円。文枝さんの13万円は女性としては平均より多いほうですが、それでもサ高住の費用には届きません。

 

「うちの場合、毎月3万円の取り崩しに加えて、空き家になった実家の固定資産税や光熱費の基本料で月1万5,000円ほど。合わせて月4万5,000円の持ち出しでした」

 

「そうなんです。実家を残したまま入居すると、住まいの費用を二重に払うことになる。仮に月4万5,000円なら年間54万円、10年で540万円です。1,100万円の貯蓄の半分が、住まいの重複だけで消えていく計算になります。お金の面でも、気持ちの面でも、今回の出戻りは合理的な判断だったと私は思いますよ」

 

その言葉に、隆志さんの表情が少し和らぎました。

 

次ページ自宅のまま、介護を“足し算”する選択肢

※プライバシーのため、実際の事例内容を一部改変しています。

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