公正証書遺言を全面的に見直す
そこでご提案したのが、公正証書遺言の全面的な見直しです。
Sさんは、「社会の役に立つ形で財産を使ってほしい」というお気持ちをお持ちでした。
寄付先として検討していたのは、
・東京都
・居住している区
・教育関係団体
・福祉関係団体
・公益性の高い法人
などです。
財産を社会へ託す「遺贈寄付」
近年、このような思いを実現する方法として注目されているのが「遺贈寄付」です。
遺贈寄付とは、遺言によって自治体や公益法人、大学、医療機関、福祉団体などへ財産を寄付する仕組みです。
人生最後の社会貢献ともいわれ、多くの方が選択するようになっています。
また、どの団体に寄付するか迷う場合には、「遺贈寄付センター」などの専門機関を利用する方法もあります。
寄付先の選定から受入体制の確認まで支援を受けることができるため、安心して遺贈先を決めることができます。
さらに、遺言内容を確実に実現するためには、遺言執行者の指定も重要です。
遺言執行者が不在の場合、寄付手続きや財産整理が滞る可能性があります。そのため、当社が遺言執行者として受任する方法についてもご説明しました。
亡くなったあとの手続きを頼める人がいない
相談の中では、Sさん自身の老後についても話題になりました。
現在は元気に仕事を続けていますが、「将来、認知症になったらどうなるのか」「亡くなったあとの手続きを頼める人がいない」という不安も抱えていました。
そこでご案内したのが、死後事務委任契約です。
死後事務委任契約では、
・看取りに関する支援
・葬儀の手配
・納骨手続き
・役所への届出
・年金や保険の手続き
・金融機関の解約
・遺品整理
・不動産処分の補助
などを生前に依頼しておくことができます。
独身の方やお子さんのいない方からの相談が年々増えており、「最後まで自分らしく生きたい」という希望を支える重要な仕組みとなっています。
Sさんも必要性を理解され、今後さらに検討していくことになりました。
「姉妹に渡したくない」から「社会に役立てたい」へ
今回の相談を通じて、Sさんは、「財産を姉妹に渡したくない」という漠然とした不安を、「社会のために役立てたい」という具体的な意思へ整理することができました。
その結果、
・公正証書遺言を新たに作成する
・遺贈寄付を前提に内容を構築する
・遺言執行者を指定する
・死後事務委任契約も検討する
という方向性が決まりました。
当社の公正証書遺言作成サポートをご依頼いただき、受託契約を締結しました。
今後は、戸籍関係資料の収集、法定相続人の確認、寄付先候補の選定、公証役場との調整を進めながら、Sさんの意思を法的に実現できる遺言書を完成させていきます。
相続実務士の視点
遺言書は、作ったら終わりではありません。家族構成が変わることもあります。財産内容が変わることもあります。そして何より、ご本人の価値観や人生観が変化します。
今回のSさんのように、20年前に作った遺言書が現在の状況に合わなくなっているケースは少なくありません。
特に、独身の方、お子さんがいない方、相続人との関係が希薄な方は注意が必要です。
法律上の相続人と、本当に財産を託したい相手が一致しているとは限りません。だからこそ、元気なうちに遺言書を見直し、自分の意思を形にすることが大切です。
最近では、遺贈寄付を選択する方も増えています。人生最後に社会へ恩返しをしたい。未来の子どもたちや福祉のために役立ててほしい。そうした思いを実現する手段として、遺言は大きな力を持っています。
「まだ先の話だから」ではなく、「元気な今だからこそ準備する」
それが、後悔しない相続対策の第一歩なのです。
久しぶりにお会いしたSさんですが、以前と変わらず、ご自分の意思が明確でした。当社としても、その思いを実現してあげたいと考えていますので、公正証書遺言の証人業務を担当できることは幸いです。
それだけでなく、今回はSさんから「推し活をしている」というお話も聞けました。以前はあるミュージシャンを推していたところ、最近ではあるプロスケーターを推しているとのこと。ショーを見に行ったり、グッズを買ったりしていると話すSさんは、とても楽しそうでした。
相続対策では、財産を残すだけでなく、自分の資産を有効に使っていただくこともおすすめしています。推し活に使うお金は、ご自分が生きるモチベーションの向上につながるため、資産活用の1つだということです。
特に、Sさんのように次世代へ財産を残す必要がないという場合には、ご自分のために使うことをおすすめします。
残すことばかりが対策ではありません。ご自分のために使い、前向きに生活することも、資産の有効活用だといえます。そうした考え方が受け入れられる時代になりました。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
