「過労死ラインまで20時間、未払い賃金1,200万円」…山積みの労務問題を解決へ導くのは「統制の3階層」【社労士が解説】

「過労死ラインまで20時間、未払い賃金1,200万円」…山積みの労務問題を解決へ導くのは「統制の3階層」【社労士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

労務問題の見えないリスクを根本から除去するためには、測定(M)で可視化し、統制(C)で構造を変え、報告(R)で経営判断につなげ、改善(I)で回す「MCRIサイクル」が重要です。金山杏佑子氏の著書『対話でわかる「経営労務」』(中央経済社)より、このなかから今回は、2つ目のステップである「統制(Control)」について解説します。

統制とは何か

測定によって、リスクの「所在」と「規模」が明らかになりました。加藤社長が直面したのは次の問いです。「では、どうするのか?」

 

・A地域とB地域で労働時間に大きな差がある―単純に人を移せばいいのか?

・未払賃金1,200万円―どう対処すればいいのか?

・過労死ラインまであと20時間―これは、どれくらい深刻なのか?

 

測定は「現状を知る」ためのステップです。しかし、現状を知っただけでは、リスクは減りません。経営者は、測定結果を踏まえて「判断」し、その判断を「制度」と「運用」に反映させる必要があります。

 

これが、MCRIサイクルにおける「C(統制:Control)」です。統制とは、経営の意思を、制度と運用に落とし込むことです。経営の意思が現場に伝わり、実際に機能するためには、制度と運用に落とし込む必要があります。

 

統制は、3つの階層で機能します。

 

1.制度の設計

就業規則、賃金規程、評価制度など、会社のルールを定めること。

例:「配送中の休憩時間を30分以上取得する」というルールを就業規則に明記する。

 

2.運用のルール

制度を実際に運用するための具体的な手順やガイドラインを定めること。

例:「休憩時間の取得状況を毎週チェックし、未取得者には上司が声をかける」という運用ルールを定める。

 

3.日々のマネジメント

現場の管理職が、制度と運用ルールに基づいて、日々の業務を管理すること。

例:営業所長が、ドライバーの勤怠記録を毎日確認し、休憩時間が取れていない場合は配送スケジュールを調整する。

 

この3つの階層がすべて機能して初めて、「経営の意思」が現場に浸透します。

 

統制が機能しない場合、当然ですが測定してもリスクは減りません。制度があっても、運用されなければ意味がありません。逆に、運用だけがあっても、制度(ルール)がなければ、属人的な判断に依存し、リスクが蓄積します。

 

 

金山 杏佑子

社会保険労務士事務所ヨルベ

代表社会保険労務士

 

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※本連載は、金山 杏佑子氏の著書『対話でわかる「経営労務」』(中央経済社)より一部を抜粋・再編集したものです。

対話でわかる「経営労務」

対話でわかる「経営労務」

金山 杏佑子

中央経済社

労務論点に「どこから着手する」がわかる。複雑な労務をM(測定)C(統制)R(報告)I(改善)のステップで整理し、制度設計、リスク許容の程度等の判断ポイントを示す。 本書『対話でわかる「経営労務」』では、労務論点に…

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