休憩問題を3つの観点で整理すると、経営判断の軸が見える
加藤社長:日本型雇用の制約、安全配慮義務、簿外債務リスク、ですね。
田中監査役:そのとおりです。林さんが挙げた「休憩時間が確保できていない」という問題を、この3つで整理してみましょう。
まず「安全配慮義務」の観点では、ドライバーの健康リスク、過労事故のリスクがあります。会社には従業員の安全を守る法的責任があります。次に「簿外債務」の観点では、休憩時間が確保できていないということは、その分の未払賃金が発生している可能性があります。突然顕在化すると財務を直撃します。
最後に「雇用制約」の観点では、すぐに人員を増やせないという前提で、業務プロセスの見直しが必要になります。
こう整理されれば、社長は「安全配慮義務と簿外債務のリスクが大きいから、優先的に対応しよう」と判断できます。
加藤社長:確かに、これなら経営判断がしやすい。
林労務責任者:3つの観点で整理すれば、私も報告しやすくなります。どの問題が経営にとって重要なのか、判断の軸ができます。
労務問題を経営改善につなげる「MCRIサイクル」
山下顧問:報告の受け方を変えることが第一歩ですが、それを継続的な改善につなげる考え方も必要ですね。私は「MCRIサイクル」という考え方で労務に向き合うことをお勧めします。
加藤社長:MCRI? PDCAみたいなものですか?
山下顧問:経営労務に応用したものです。M(測定)、C(統制)、R(報告)、I(改善)の4つです。
まず、労務の状況を数値で把握する。次に、ルールや制度で統制する。それを経営会議で報告する。そして、問題があれば改善する。この4つを意識して回し続けることで、カビを根から除去し、労務が経営の一部として機能していきます。
加藤社長:今日の「3つの観点で報告」は、その「R(報告)」の部分ですね。
山下顧問:そのとおりです。まずは報告から始めて、徐々に測定や統制の仕組みも整えていけばいい。一度にすべてを変える必要はありません。
たとえば測定については、労働時間を例に考えるとわかりやすいでしょう。何を測るべきか、どうデータを取るか。統制については、長時間労働を是正するという経営の意思を、制度と現場の運用にどう反映させるか。報告については、今日お話しした3つの観点で整理する。改善については、PDCAを回し続けるこの4つの視点を持つだけでも、労務への向き合い方が変わります。
加藤社長:わかりました。次回から、その3つの観点で報告をお願いします。そして、この4つの視点を意識して、労務に取り組んでいきましょう。
林労務責任者:承知しました。まずは、今日挙げた問題を3つの観点で整理して、次回報告します。
金山 杏佑子
社会保険労務士事務所ヨルベ
代表社会保険労務士
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