労務問題はカビのように広がる…経営者が見落としがちな労務リスクを根こそぎ除去し経営改善につなげる「MCRIサイクル」とは【社労士が解説】

労務問題はカビのように広がる…経営者が見落としがちな労務リスクを根こそぎ除去し経営改善につなげる「MCRIサイクル」とは【社労士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

会社経営において、労務問題は切っても切り離せない重要な要素です。その一方、労務問題の大半はカビのようなものであり、問題の根が経営者から見えにくいからこそ恒常化しやすい傾向があります。今回は、金山杏佑子氏の著書『対話でわかる「経営労務」』(中央経済社)より、労務問題の可視化から改善までを行うための「MCRIサイクル」について解説します。

休憩問題を3つの観点で整理すると、経営判断の軸が見える

加藤社長:日本型雇用の制約、安全配慮義務、簿外債務リスク、ですね。

 

田中監査役:そのとおりです。林さんが挙げた「休憩時間が確保できていない」という問題を、この3つで整理してみましょう。

 

まず「安全配慮義務」の観点では、ドライバーの健康リスク、過労事故のリスクがあります。会社には従業員の安全を守る法的責任があります。次に「簿外債務」の観点では、休憩時間が確保できていないということは、その分の未払賃金が発生している可能性があります。突然顕在化すると財務を直撃します。

 

最後に「雇用制約」の観点では、すぐに人員を増やせないという前提で、業務プロセスの見直しが必要になります。

 

こう整理されれば、社長は「安全配慮義務と簿外債務のリスクが大きいから、優先的に対応しよう」と判断できます。

 

加藤社長:確かに、これなら経営判断がしやすい。

 

林労務責任者:3つの観点で整理すれば、私も報告しやすくなります。どの問題が経営にとって重要なのか、判断の軸ができます。

労務問題を経営改善につなげる「MCRIサイクル」

山下顧問:報告の受け方を変えることが第一歩ですが、それを継続的な改善につなげる考え方も必要ですね。私は「MCRIサイクル」という考え方で労務に向き合うことをお勧めします。

 

加藤社長:MCRI? PDCAみたいなものですか?

 

山下顧問:経営労務に応用したものです。M(測定)、C(統制)、R(報告)、I(改善)の4つです。

 

まず、労務の状況を数値で把握する。次に、ルールや制度で統制する。それを経営会議で報告する。そして、問題があれば改善する。この4つを意識して回し続けることで、カビを根から除去し、労務が経営の一部として機能していきます。

 

加藤社長:今日の「3つの観点で報告」は、その「R(報告)」の部分ですね。

 

山下顧問:そのとおりです。まずは報告から始めて、徐々に測定や統制の仕組みも整えていけばいい。一度にすべてを変える必要はありません。

 

たとえば測定については、労働時間を例に考えるとわかりやすいでしょう。何を測るべきか、どうデータを取るか。統制については、長時間労働を是正するという経営の意思を、制度と現場の運用にどう反映させるか。報告については、今日お話しした3つの観点で整理する。改善については、PDCAを回し続けるこの4つの視点を持つだけでも、労務への向き合い方が変わります。

 

加藤社長:わかりました。次回から、その3つの観点で報告をお願いします。そして、この4つの視点を意識して、労務に取り組んでいきましょう。

 

林労務責任者:承知しました。まずは、今日挙げた問題を3つの観点で整理して、次回報告します。

 

 

金山 杏佑子

社会保険労務士事務所ヨルベ

代表社会保険労務士

 

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※本連載は、金山 杏佑子氏の著書『対話でわかる「経営労務」』(中央経済社)より一部を抜粋・再編集したものです。

対話でわかる「経営労務」

対話でわかる「経営労務」

金山 杏佑子

中央経済社

労務論点に「どこから着手する」がわかる。複雑な労務をM(測定)C(統制)R(報告)I(改善)のステップで整理し、制度設計、リスク許容の程度等の判断ポイントを示す。 本書『対話でわかる「経営労務」』では、労務論点に…

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