(3)簿外債務リスクを制御すること
労務には、貸借対照表に現れない「簿外債務」が潜んでいます。未払残業代や退職金の積立不足、社会保険の加入漏れ、偽装請負発覚による遡及対応。これらは、財務諸表上は見えませんが、法的には確実に存在する債務です。
簿外債務が一度に顕在化すると、企業の財務を直撃します。150名規模の企業でも、半数の従業員に月10時間の未払残業が3年間あれば、数千万円に達します。
決算書を見て「利益が出ている」と思っていても、実は数千万円の債務を抱えている。こうした状況は、決してめずらしくありません。
さらに、未払賃金の消滅時効は、将来的に5年に延長されます※1。つまり、簿外債務のリスクは、今後さらに拡大していきます。
※1 法令上は5年ですが、経過措置として「当面の間」3年とされています
この3つは、それぞれ独立しているようで、実は深く関連しています。日本型雇用の制約(1)があるからこそ、安全配慮義務(2)が重くなります※2。簡単に解雇できないのであれば、従業員の健康を長期的に守らなければならない。そして、この2つを怠れば、簿外債務(3)が積み上がっていきます。
逆に言えば、この3つを押さえることで、労務リスクの大部分をカバーできるのです。膨大な労働法規や複雑な制度に圧倒される必要はありません。この3つの本質に立ち返れば、何が重要で、何を優先すべきかが見えてきます。
※2 法的な因果関係を意味するものではなく、経営実務上、相互に関連する論点として捉える必要があるという趣旨です。
金山 杏佑子
社会保険労務士事務所ヨルベ
代表社会保険労務士
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