ドライバーの時間外労働が平均48時間でも、経営会議では「問題なし」…現場の労務リスクを放置した先にある、深刻な経営危機【社労士が解説】

ドライバーの時間外労働が平均48時間でも、経営会議では「問題なし」…現場の労務リスクを放置した先にある、深刻な経営危機【社労士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

働き方改革やハラスメント対策など、企業経営における労務の重要性は多くの経営者が十分に理解しているかと思います。しかし、「労務担当者から報告をもらっても、経営としてどのように判断すればいいかわからない」と悩む経営者も多くいます。また、労務担当者側も労務問題を経営にどのように接続するかの目線を持っていないケースがあります。今回は、金山杏佑子氏の著書『対話でわかる「経営労務」』(中央経済社)より、労務報告が形式化してしまっている企業に起こり得るリスクの種を解説します。

労務リスク放置で起こる“深刻な事態”

ヨルベロジスティクス社で起きていた、労務報告が形式的になり、経営判断につながらないという状況は、決してめずらしいことではありません。

 

多くの経営者は、労務の重要性を理解しています。働き方改革、人的資本経営、ハラスメント防止が企業経営に影響を与えることも認識しています。それでも、「労務担当者からの報告を聞いても、経営としてどう判断すればいいかわからない」というのが実情です。また、労務担当者の側も、経営への接続の目線を持っていません。

 

その結果、何が起きるのでしょうか。

 

「まさか、うちの会社が訴えられるなんて…」

 

ある日突然、数億円単位の損害賠償請求が会社に突きつけられる。長時間労働をめぐる過労死訴訟や、ハラスメントに伴う精神疾患による損害賠償、解雇無効の訴え、安全管理の不備による重大労災。

 

経営会議で毎月「問題はない」と報告されてきた陰で、企業価値を揺るがすリスクは静かに、しかし確実に膨らんでいた。本来、労務は取締役会で扱うべき経営の重要テーマの1つだ。しかし現実には、その手前の経営会議においてすら、取り扱われることは少ない。営業戦略や財務戦略が闊達に議論される中、労務の話題になると議論の質が一段下がる。実務レベルの細かい質問か、本質的ではない論点に逸れてしまう。

 

結果として、経営として本来判断すべき意思決定が先送りされ、リスクが放置される。労務担当者は孤立し、経営陣は労務を「コスト」や「面倒な法対応」としか捉えられなくなっていく。このような状況が生まれてしまうのです。

 

 

金山 杏佑子

社会保険労務士事務所ヨルベ

代表社会保険労務士

 

 

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※本連載は、金山 杏佑子氏の著書『対話でわかる「経営労務」』(中央経済社)より一部を抜粋・再編集したものです。

対話でわかる「経営労務」

対話でわかる「経営労務」

金山 杏佑子

中央経済社

労務論点に「どこから着手する」がわかる。複雑な労務をM(測定)C(統制)R(報告)I(改善)のステップで整理し、制度設計、リスク許容の程度等の判断ポイントを示す。 本書『対話でわかる「経営労務」』では、労務論点に…

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