労務リスク放置で起こる“深刻な事態”
ヨルベロジスティクス社で起きていた、労務報告が形式的になり、経営判断につながらないという状況は、決してめずらしいことではありません。
多くの経営者は、労務の重要性を理解しています。働き方改革、人的資本経営、ハラスメント防止が企業経営に影響を与えることも認識しています。それでも、「労務担当者からの報告を聞いても、経営としてどう判断すればいいかわからない」というのが実情です。また、労務担当者の側も、経営への接続の目線を持っていません。
その結果、何が起きるのでしょうか。
「まさか、うちの会社が訴えられるなんて…」
ある日突然、数億円単位の損害賠償請求が会社に突きつけられる。長時間労働をめぐる過労死訴訟や、ハラスメントに伴う精神疾患による損害賠償、解雇無効の訴え、安全管理の不備による重大労災。
経営会議で毎月「問題はない」と報告されてきた陰で、企業価値を揺るがすリスクは静かに、しかし確実に膨らんでいた。本来、労務は取締役会で扱うべき経営の重要テーマの1つだ。しかし現実には、その手前の経営会議においてすら、取り扱われることは少ない。営業戦略や財務戦略が闊達に議論される中、労務の話題になると議論の質が一段下がる。実務レベルの細かい質問か、本質的ではない論点に逸れてしまう。
結果として、経営として本来判断すべき意思決定が先送りされ、リスクが放置される。労務担当者は孤立し、経営陣は労務を「コスト」や「面倒な法対応」としか捉えられなくなっていく。このような状況が生まれてしまうのです。
金山 杏佑子
社会保険労務士事務所ヨルベ
代表社会保険労務士
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