(※画像はイメージです/PIXTA)

「繰り下げれば年金額が増え、残された家族も安心」。そう信じて繰下げを選んだ元公務員の夫が73歳で急逝したとき、妻に提示された遺族厚生年金は、想像を大きく下回るものでした。繰下げで増えた分は遺族年金に反映されず、自分の年金との併給調整も入る。これは個別の事例ではなく、公的年金の明確なルールに基づく結果です。最新の統計と制度を基に、世帯全体でどう判断すべきかを整理します。*本記事は、社会保険労務士への相談でよく見られる事例を基に、個人が特定できないよう再構成しています。

多くの人が誤解している公的年金のルール

なぜ、このような悲劇が起きてしまうのでしょうか。原因は、多くの人が誤解している公的年金のルールにあります。

気をつけたい年金ルール①:遺族年金は繰下げ増額の対象外

「繰り下げて増やした年金額をベースに遺族年金が計算される」と思い込んでいる人は多いです。

 

法律上、遺族厚生年金の額は「死亡した人が65歳以上で受け取るはずだった報酬比例部分(本来の年金額)」の4分の3と定められています(*公務員の旧職域加算部分等も同様に原則として繰下げ増額分は遺族側に反映されません)。

 

つまり、夫が70歳や73歳まで繰下げ待機をして年金額を1.3〜1.4倍に増やしていたとしても、死亡した際には、その繰下げ増額分は消失します。遺族に払われるのは、あくまで「65歳時点の報酬比例部分(本来の年金額)の4分の3」なのです。

気をつけたい年金ルール②:自分の年金と相殺される「併給調整(差額支給)」

65歳以上の配偶者が遺族厚生年金を受け取る場合、「併給調整(へいきゅうちょうせい)」が適用されます。

 

これは、「自分の老齢厚生年金」と「遺族厚生年金」の両方が満額もらえるのではなく、まず自分自身の老齢厚生年金を全額受け取り、遺族厚生年金のほうが高い場合にのみ「その差額分」が上乗せ支給されるというルールです。

 

さらに、夫が繰下げを行なっている間は、年下の妻がいる世帯に支給される「加給年金(年額40万〜42万円程度、特別加算含む)」も支給ストップします。この加給年金は後から遡って受け取ることもできないため、繰下げによって数十万〜数百万円単位の「もらい損」が発生していたのです。

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