(※画像はイメージです/PIXTA)

「繰り下げれば年金額が増え、残された家族も安心」。そう信じて繰下げを選んだ元公務員の夫が73歳で急逝したとき、妻に提示された遺族厚生年金は、想像を大きく下回るものでした。繰下げで増えた分は遺族年金に反映されず、自分の年金との併給調整も入る。これは個別の事例ではなく、公的年金の明確なルールに基づく結果です。最新の統計と制度を基に、世帯全体でどう判断すべきかを整理します。*本記事は、社会保険労務士への相談でよく見られる事例を基に、個人が特定できないよう再構成しています。

年金事務所で告げられた「衝撃の提示額」

夫の死後、悲しみに暮れる暇もなく、Aさんは長男Cさんに付き添われて年金事務所へ遺族年金の手続きに向かいました。

 

「父さんは73歳まで年金を受け取らずに我慢して繰り下げていた。月22万円の本来の額も、繰下げで36〜37万円近くに増えていたはずだ。その4分の3(約27万円前後)は母さんに支給されるだろう」

 

そう考えていた長男CさんとAさんに対し、窓口の担当者から提示された遺族厚生年金の月額は、目を疑うほど少ない金額でした。

 

繰下げによる増額分(約67%アップ)は夫の死亡と同時に消滅し、遺族厚生年金は65歳時点の本来の額(報酬比例部分)をベースに再計算されました。遺族厚生年金の計算対象となるのは夫の年金22万円のうち、老齢基礎年金(約6.8万円)を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分:約15.2万円)の4分の3のみです。そのため、提示された額は月約12万円にとどまりました。

 

さらに妻Aさん自身の年金との「併給調整」が行われました。65歳以上の場合、自分の老齢厚生年金を全額優先して受け取り、遺族厚生年金はその差額分のみが上乗せされるルールです。その結果、妻Aさんが受け取れる総額は、自身の年金(月7万円)を含めて月約18万〜19万円程度。遺族厚生年金は非課税ですが、国民健康保険料や介護保険料などが差し引かれ、手取りとしては「月約17万円」程度になることが判明したのです。

 

夫婦で描いていた老後資金の想定を大きく下回る現実を突きつけられ、Aさんは窓口で言葉を失いました。

 

「夫は自分たちのために、いろいろと我慢して年金を遅らせていたのに……。あの我慢はなんだったのでしょうか。もしかしたらもっと生きられたのでは?とまで思ってしまいます」(Aさん)

 

長男Cさんも「こんなことってありますか。制度が間違っているとしか思えない!」と憤りを隠せませんでした。

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