(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢になると、将来何かあったときに子どもを頼れる距離に住みたいと考える人もいます。一方、近すぎれば互いの生活に踏み込みやすくなるのも家族ならでは。同居はせず、必要なときには助け合える「近居」を選ぶことも、高齢期の暮らし方のひとつです。

合鍵は渡さない…近くに住んでも守った「それぞれの生活」

引っ越して数ヵ月後、長女から「念のため合鍵を預かっておこうか」と言われました。恵美子さんは少し考え、断りました。

 

「まだ大丈夫。必要になったら、そのときお願いするね」

 

住み替え直後、孫の送り迎えや夕食を頼まれることが何度か続き、恵美子さんは「近くに住んでいるからといって、何でも引き受けるのが当たり前になってしまうのは違う」と感じていました。

 

同時に、夫婦も娘一家の生活を尊重するよう心がけました。

 

ある日、孝之さんが野菜を届けようと連絡せずに娘宅を訪ねたところ、家族は外出中でした。それ以来、どれだけ近くても訪ねる前には連絡することを夫婦の決まりにしています。

 

一緒に夕食をとるのは月に2~3回ほど。孫を預かるときも、夫婦に予定があれば断ります。休日には孝之さんは趣味の写真撮影へ、恵美子さんは友人と出かけます。

 

内閣府『令和7年版高齢社会白書』によれば、2023年時点で65歳以上の人がいる世帯は全世帯の49.5%。その世帯構成は、かつて多かった三世代世帯から変化し、現在では夫婦のみの世帯と単独世帯がそれぞれ約3割を占めています。

 

もちろん、タワーマンションへの住み替えには負担もあります。夫婦の場合、管理費と修繕積立金で月約4万5,000円。固定資産税もかかり、将来的に修繕積立金が上がる可能性もあります。

 

それでも夫婦は、車に頼らず生活できることと、娘一家に何かあれば歩いて行ける距離に価値を感じています。

 

「娘とはスープの冷めない距離がちょうどいいんです。近いけれど、同じではない。それくらいが私たちには合っていました」

 

子どもの近くに住むことは、将来の安心につながる場合があります。ただし、距離が縮まれば、親が子を頼りすぎたり、反対に子どもから家事や孫の世話を期待されたりする可能性もあります。

 

近居を長く心地よいものにするには、助け合える距離と踏み込まない距離、その両方を残しておくことが大切なのでしょう。

 

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