「家族がいるのに寂しい」母が息子に初めて伝えた本音
それから春江さんは、自室で過ごす時間が増えました。
以前はリビングで新聞を読み、庭を眺めながら昼食をとっていました。しかし、息子一家が暮らし始めてからは、「邪魔にならないように」と自分の部屋へ食事を持っていくこともありました。
決定的だったのは、友人を家に招こうとしたときです。
「来週、昔の友達が2人来るんだけど」
そう伝えると、浩司さんから困った顔で言われました。
「その日は俺たちも家にいるから、できれば外で会ってくれない?」
春江さんは反論できませんでした。
翌週、友人とは駅前の喫茶店で会いました。帰宅すると、リビングでは息子一家がテレビを見ながら笑っていました。
「そのとき、自分だけがこの家の“お客さん”みたいに感じたんです」
数日後、春江さんは初めて浩司さんに気持ちを伝えました。
「あなたたちと暮らすのが嫌なわけじゃない。でも、全部やってもらいたいわけでもないの。私はまだ、自分の生活をしたい」
浩司さんは驚き、「楽をさせているつもりだった」と答えたといいます。
話し合った結果、春江さんが午前中はリビングや台所を自由に使い、週に数回は夕食も担当することになりました。友人を招く際も、事前に予定を共有すれば遠慮する必要はないと決めました。
春江さんは現在も息子一家と暮らしています。
高齢の親との同居では、本人がこれまで担ってきた家事や人付き合い、家の中での役割をどこまで残すかも重要です。
善意から先回りして何でも代わってしまえば、親にとっては「楽になった」のではなく、「自分の暮らしを失った」と感じる場合もあります。同居を長く続けるためには、世話をする側とされる側ではなく、同じ家で暮らす大人同士として、それぞれの居場所を確保することが必要なのかもしれません。
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