「東京なんて、もううんざりだ」
会社員時代の水沢一郎さん(仮名・65歳)は都内の外れにある、小さな印刷会社で40年以上働いてきました。朝は満員電車、昼は得意先回り、夜は終電間際の帰宅。独身だったため、仕事中心の生活。
そんな中で年に数回、長野へ一人旅に出かけるのが楽しみでした。空気の澄んだ景色に癒やされるたび、「老後はここで暮らしたい」という思いを強くしていきました。
そして、65歳で完全退職。年金は月11万円ほど。都内で暮らし続けるには少し心細い金額でしたが、退職金とコツコツ貯めた預貯金が約1,300万円あり、田舎暮らしならどうにかなると考えていました。
移住先に選んだのは長野県内の小さな町。家賃は東京で住んでいた6畳一間の約8万円から4万5,000円へ。近くには山があり、スーパーまで車で15分です。
「毎日が旅行みたいで、楽しかった」
最初の数ヵ月は本当に幸せでした。朝は散歩。昼は読書。夕方は温泉。都会の騒音とは無縁の生活。「東京を離れてよかった」――心底そう思っていたのです。
ところが、半年ほどすると少しずつ気持ちが変わっていったのです。
