投資の前提となる「コア・サテライト戦略」
退職金を狙って、金融機関や一部の独立系FPが私募ファンドや社債、未上場企業への出資などを勧めるケースは珍しいものではありません。実際、富裕層や機関投資家が将来性のある未上場企業へ出資し、大きなリターンを得ることもあります。
一方で、未上場株式や事業への出資は市場でいつでも売却できる上場株式とは異なり、売却したくても買い手が見つからないことが少なくありません。
また、どれほど実績のあるビジネスモデルでも、景気や人材不足、競争環境の変化などによって、計画どおりに成長するとは限りません。だからこそ、資産運用では「コア・サテライト戦略」という考え方が重要になります。
「コア資産」というのが、老後資金や生活資金など、将来必要になるお金を安定的に管理・運用する部分。「サテライト資産」は、高いリターンを目指して積極的にリスクを取る部分を指します。
今回のような未上場企業への出資は、「サテライト資産」として位置づけるべきものです。そのため、老後の生活の土台となる退職金をそのまま投入してしまうことは、リスク管理の観点から慎重であるべきといえます。
総務省「家計調査(2025年)」によると、高齢夫婦無職世帯は毎月平均で赤字となり、多くの世帯が金融資産を取り崩しながら生活しています。また、金融広報中央委員会(現・J-FLEC)の調査でも、高齢世帯の金融資産には大きな個人差があることが示されています。
だからこそ、まずはライフプランニングを行い、今後必要となる生活費や介護費用などを見積もり、「失ってはならない資金」を明確にすることが重要です。そのうえで十分な「余裕資金」がある場合に、サテライト資産の投資を検討するのが望ましいでしょう。
うまい話には裏がある…守るべき資産を見誤らないために
田中夫婦は、信頼していたFPから紹介された投資だったからこそ安心感を持ち、乗り気になって退職金のすべてを投じてしまいました。しかし、どれほど魅力的な投資に見えても、「高いリターン」には必ず相応のリスクが存在します。
投資を検討する際には、投資先が良いか悪いかだけではなく、投じる資産が自分にとって「失っても生活に支障がないお金なのか」を見極めることが重要です。
退職金はその後の人生を豊かにするための資産だからこそ、「安定して再現性のある運用ができるかどうか」という視点で資産配分を考えることが、後悔しない老後への第一歩といえるでしょう。
小川 洋平
FP相談ねっと
ファイナンシャルプランナー
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