「信頼していたから…」退職金4,000万円の“預け先”
田中一郎さん(仮名/66歳)と妻の洋子さん(仮名/66歳)は、ともに地方公務員として入庁した同期同士です。若くして結婚し、2人の子どもを育てながら40年以上勤め上げました。子どもたちはすでに独立し、それぞれ家庭を築いています。
夫婦は浪費とは無縁で、長年にわたり堅実な家計管理を続けてきました。退職時には、2人合わせて約4,000万円の退職金を受け取っており、これまで積み立ててきた預貯金や投資信託などを含めると、金融資産は約6,000万円になります。公的年金も夫婦で月約35万円あり、老後の生活に大きな不安はありませんでした。
そんなある日、以前からライフプランの相談をしていたFPからある提案を受けました。
「これは一般にはあまり出回らない、富裕層向けの投資なんですが」
内容は、フランチャイズ事業を展開する複数の企業へ投資する法人への出資でした。
「実績あるFC事業へ分散投資しています」「年10%を超える配当も期待できます」「老後にゆとりある生活を送っても、資産は減りません」
長年の付き合いでそのFPを信用していたこともあり、田中夫婦は話を聞くうち、乗り気になっていきました。
「資産が減らないなら、FPの言葉を信じよう」
そう考えた夫婦は、退職金4,000万円全額を出資する決断をしました。しかし、その決断を後悔する日は、思ったより早く訪れることに……。
「配当はありません」…希望が絶望へ変わった1年後
出資から約1年が過ぎたころ、投資先の法人から説明会の案内が届きました。夫婦は、「そろそろ配当の話が聞けるだろう」と期待して会場へ向かいます。ところが、説明は想像とはまったく違うものでした。
聞けば、投資対象となっていた複数のフランチャイズ事業のうち、業績が大きく悪化している企業が多く、利益はほとんど出ていないというのです。出店計画どおりに店舗が増えず、採算が合わない事業も出始めていました。
当然、期待していた配当はなく、今後いつ利益が出るのかも明確な説明はありません。
「どういうことだ。話が違うだろう」
予想外の事態に、田中さんはFPへ連絡を入れましたが、FPは言い訳を並べるばかりでした。
「私もこのような結果になるとは思っておらず……」
出資は法人の株式を取得する形で行われていたため、価格保証はありません。株式を売却したい場合は買い手を探すことになりますが、未上場企業の株式は上場株式のように市場ですぐ売れるものではありません。その後も会社から業績報告はあるものの、「いつ配当が再開するのか」「出資金が戻るのか」は誰にもわからない状態でした。
結局、4,000万円はいつ回収できるか見通しの立たない“檻のなかの資産”となってしまったのです。
老後資産6,000万円のうち残る2,000万円は大きく減っておらず、月35万円の年金もあるものの、多額の退職金が手元から消えてしまったショックは大きく、「真面目に生きてきて、老後がこれか……」と夫婦は大きな不安を抱えています。

