“属人化”を防ぐ労務管理の鉄則
Bさんの横領が5年間も発覚しなかった最大の原因は、会社の管理体制そのものにあります。不正行為は「機会」「動機」「正当化」の3つの条件が揃ったときに発生すると言われています(不正のトライアングル理論)。
会社がすべきは、社員が不正を行える「機会」を物理的・システム的に排除することです。属人化(特定の人にしか業務がわからない状態)を防ぐための鉄則を紹介します。
職務分掌(業務の分離)の徹底
最も危険なのは、「請求書の受領」「振込データの作成」「銀行印・トークンの管理」「最終承認」をすべて一人で行っている状態です。
・作成者と承認者を分ける: 経理担当者が振込データを作成し、最終的な実行(承認・パスワード入力)は社長や別の役員が行う体制にします。
・現物管理を分ける: 通帳の保管者と、銀行印の保管者を別々の社員にします。
小口現金の廃止とキャッシュレス化
「手提げ金庫」のなかにある小口現金は、横領されやすいターゲットです。現在では、法人用クレジットカードや、経費精算システムを用いた社員個人の口座への直接振込など、小口現金を持たずに済む仕組みが普及しています。社内から現金を物理的になくすことが最大の防御です。
定期的なジョブローテーションと「休みの強制」
一人の社員が長期間同じ部署に留まることは、不正の温床になります。中小企業で人員の配置転換が難しい場合でも、以下のような対策が有効です。
・最低でも年に1回は長期休暇(1週間程度)を取らせる: 本人がいない間に別の社員や社長が業務を代行することで、隠されていた不正やミスが発覚しやすくなります。
・外部の目を入れる: 月に一度、税理士や外部のコンサルタントに抜き打ちで帳簿と預金残高の突合(チェック)を依頼します。
クラウドシステムの導入による透明化
クラウド会計システムや経費精算システムを導入し、社長がいつでも自分のスマートフォンやPCから会社の資金繰りや経費の動きを閲覧できるようにします。システム上の操作ログ(誰が、いつ、どのデータを修正したか)が残るため、改ざんの抑止力になります。
