デジタル化が進んでも行政は「縦割り」のまま
この事例から感じたのは、行政機関同士の連携が十分とはいえない現実です。
死亡届は提出されているにもかかわらず、関連する行政手続きは機関ごと、部署ごとに個別に進められます。同じ区役所の中であっても担当部署が異なれば情報共有は十分とはいえず、住民側が何度も手続きを行わなければならない場面が少なくありません。
行政ではマイナンバーをはじめとするデジタル化が進み、職員は共通の情報システムを利用しています。それにもかかわらず、社会保障に関する行政サービスは依然として分散しており、一元的な運用には至っていないのが現状です。
「これだけシステム化が進んでいるのに、なぜ一元化できないのか」。知人の疑問は、多くの国民が感じる率直な思いではないでしょうか。
給付付き税額控除の将来に求められる視点
2029年度に導入が予定されている給付付き税額控除は、当初は給付機能を中心とした制度になるとみられています。しかし、その運用には財務省だけでなく、厚生労働省や内閣府、都道府県、市区町村の福祉部門など、多くの行政機関が関わることになるでしょう。
一方で、日本では少子高齢化が進み、行政手続きのデジタル化も加速しています。給付付き税額控除が一度導入されれば、その制度は数十年にわたって運用される可能性があります。
そう考えると、税と社会保障を一体的に運営できる行政体制の整備は避けて通れません。
判断能力が低下した高齢者への給付手続きや、デジタル機器の利用が難しい人への支援、複数の行政機関をまたぐ情報連携など、制度を持続可能なものとするためには、給付方法の簡素化と行政の一元化を同時に進める必要があります。
給付付き税額控除は単なる「給付制度」ではありません。税制と社会保障を結び付ける新しい仕組みである以上、その成功の鍵は制度そのものだけでなく、行政システム全体をどこまで効率的かつ利用者本位に再構築できるかにかかっているのではないでしょうか。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
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