「もう無理…」一言に込められた娘の本心
奈緒さんは佐代子さんを支えるため、正社員を辞めて短時間勤務へ切り替えました。収入は減り、休日も通院や家事で終わる毎日。友人との約束を断ることも増え、「自分の人生は後回し」が当たり前になっていきました。
佐代子さんの年金は月15万円、預貯金は約1,000万円。介護ベッドや手すりの設置、住宅改修などで少しずつ貯蓄は減り、できるだけお金を使わないようにと、奈緒さんはサービス利用にも消極的になっていました。
そんなある日、寒い冬の夜でした。入浴をしようとしたときに、足がふらつき滑ってしまった佐代子さん。奈緒さんはとっさに支えようとしましたが、女性とはいえ全体重がかかった身体を支え切ることはできません。
「危ない!」
二人で浴室の洗い場に倒れ込むと、思わず佐代子さんは「しっかり支えてよ!」と声を荒らげてしまったのです。
その瞬間に零れたのが、「もう無理」という沈痛なひと言でした。
佐代子さんは奈緒さんを改めて見つめました。以前より痩せた顔。寝不足で目の下にできたくま。笑顔を見せなくなった娘。
「私は、この子に介護を任せることしか考えていなかった」
そう気づいたといいます。

