「最近、妻が何を話しかけても無視するんです」
祐介さん(仮名・47歳)は、妻の美香さん(仮名・45歳)、高校生の長女、中学生の長男と暮らす会社員です。営業部の課長代理として働き、帰宅は平日の午後9時を過ぎることも珍しくありませんでした。
美香さんは週5日のパート勤務をしながら、食事づくりや洗濯、学校関係の手続きなどを担っていました。祐介さんは、自分なりに家族を支えてきたつもりでした。
「仕事で疲れているけど、休日には家にいる。頼まれればゴミ出しや買い物だってしていました」
しかし、ある時期から美香さんの態度が変わりました。祐介さんが帰宅して「ただいま」と言っても、短くうなずくだけ。休日に話しかけても、「今は忙しいから」と会話を切り上げられます。
「最近、俺が何を話しかけても無視するよね」
祐介さんが尋ねると、美香さんは淡々と答えました。
「私もずっと、同じ気持ちだったから」
祐介さんには、その意味がわかりませんでした。
美香さんによれば、以前から家事や子どものことを相談しても、祐介さんはスマートフォンを見ながら「あとで聞く」と返すことが多かったといいます。
「来月、長女の進路面談があるんだけど」
「今ちょっと疲れてる。あとでいい?」
「お義母さんの通院、次はあなたにも付き添ってほしい」
「日程が決まったら言って」
話を聞いていないつもりはありませんでした。しかし後日になっても祐介さんから尋ねることはなく、結局、美香さんが一人で対応していました。
家事についても、祐介さんは「言ってくれればやる」と考えていました。しかし美香さんにとっては、何を頼むか考え、手順を説明し、終わったか確認することまでが新たな負担でした。
「私が頼まなければ、何もしなくていいと思っていたでしょう」
「そんなつもりはないよ」
「でも、実際にそうだったよね」
内閣府『令和7年版男女共同参画白書』では、6歳未満の子どもがいる夫婦について、すべての都道府県で妻の家事関連時間が夫より210分以上長いことが示されています。祐介さん夫婦も、子どもが幼い頃から家事や育児の多くを美香さんが担う状態が続いていました。
「忙しいから仕方がない」と思っていた祐介さんの陰で、美香さんは何度も話し合おうとしていました。そして、何を言っても変わらないと感じ、少しずつ話すことをやめたのです。
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