(※写真はイメージです/PIXTA)

国税庁が進める「取引相場のない株式」の評価方法見直しが、中小企業のオーナー経営者や事業承継実務に大きな影響を与える可能性が出てきた。7月3日に開かれた「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」(第4回)では、これまでの各委員意見が整理されるとともに、具体的な節税スキームが明らかにされた。議論の根底にあるのは、事業承継への配慮を評価制度のなかで行うのか、それとも税制上の特例として整理するのかという、日本の非上場株評価のあり方そのものを問い直す問題だ。昭和39年の制定以来、大枠を維持してきた評価ルールは、いま大きな転換点を迎えようとしている。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

「法の精神」と「ルールの網の目」の乖離

これらのスキームに共通しているのは、事業の継続や発展のためではなく、「現行の財産評価基本通達の計算式に当てはめたときに、最も数字が小さくなる状態」を逆算して人工的に作り出している点だ。

 

裁判所がこれまで通達評価を容認してきたのは、あくまで納税者の便宜や徴税コストの削減という実務上の簡便性を重視したためである。

 

しかし、ここまで乖離が大きくなると、課税の公平性を著しく害することになる。今回の見直し議論は、こうしたルールの網の目をくぐる節税に対して、制度そのものを根本から変えることで網の目自体をなくそうという国税庁の強い意志の表れと言える。

「総則6項」だけでは限界も

これまで、極端な事例については評価通達6項による個別対応が行われてきた。しかし、個別否認だけでは納税者の予測可能性が低いという問題もある。

 

有識者会議でもある委員は「評価通達6項の適用は評価の適正性を保つために必要であるが、納税者の予測可能性を確保する観点からも、評価方法について見直しを行うべき」と述べており、事後的な否認から制度設計による事前的な対応へと軸足を移す方向性が議論されている。

 

一方で「スキーム対策を行っていない者に大きな影響が出ないようにする視点も必要」との慎重論もあり、抜本改正の副作用への目配りも求められている。

評価方式そのものの見直しも視野に

有識者会議では、類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式という現行の3方式それぞれについて、委員から踏み込んだ意見が出された。

 

類似業種比準方式については、「業種目判定の困難さ」「赤字が続くと特定の評価会社になり評価額が上昇する問題」「親会社単体の利益のみで評価するため過小評価となる」といった批判が相次いだ一方、「簡便性等の点から優れており、事業承継の役割を担ってきた一連の流れと歴史があることから見直しには慎重であるべき」との擁護論も出た。

 

純資産価額方式についても、「継続企業を清算価値に相当するもので評価することに合理性はあるのか」との疑問が呈され、「時価純資産に営業権を適切に反映させて評価するのがよいのではないか」との代替案が示されている。

 

配当還元方式(還元率10%)についても、「従業員持株会が事実上設立できなくなる」懸念や、無配当の場合の1株当たり配当額を一律2円50銭とする取扱いへの疑問など、複数の論点が示された。

オーナー経営者にとっての意味

今回の有識者会議は、単なる技術的な通達改正ではない。日本は今後、どのような形で中小企業の事業承継を支えていくのかという、制度設計そのものを問い直す議論である。

 

会議は今後、夏から秋にかけて論点整理・取りまとめが行われ、令和9年度税制改正大綱への反映、パブリックコメントを経て、早ければ令和10年1月から新ルールが適用される見通しとされる。

 

オーナー経営者にとっては、自社株対策の前提そのものが変わる可能性を見据え、専門家とともに事業承継戦略を早期に再点検する時期が近づいているようだ。


 

THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班

 

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