親の言葉が子どもの心に残すもの
家計の方針について、「子どもにはお金の現実を教えるべき」「あると言って甘えさせてはいけない」など、さまざまな意見があるでしょう。ただ、後藤さんのケースにおいての問題は、お金を出すかどうかより「どう伝えるか」という誠実さの欠如、そして「家族の現在の幸せ」を犠牲にしすぎた点にありました。
「夫婦の老後のため」「息子に迷惑をかけないため」……そんな目的があったとしても、うちは貧乏だからと家族に我慢させるのではなく、「我が家の将来のために、いまはこれだけの予算でやりくりしたい」「協力してくれてありがとう」と、正直に感謝を伝えていれば、息子の受け止め方は違ったものになっていたはずです。
厚生労働省「令和5年簡易生命表」によると、男性の平均寿命は81.09年、女性の平均寿命は87.14年。長寿化が進む一方で、年金だけでは心もとない時代、現役時代にお金を貯める努力をすることは、間違いではありません。しかし、人生はいつ終わるかわかりません。また、そのお金を持って死ぬこともできません。
貯金残高は増やせても、失われた家族との時間は二度と取り戻せない――後藤さんの後悔は、そのことを静かに物語っています。
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