「家族だから」で抱え込まない…支援につなげるという選択
涼子さんは最初、弟の生活費を少し援助しようと考えました。月に3万円か5万円なら何とかなるかもしれない。そう思ったのです。
しかし、夫は難色を示しました。
「一度出し始めたら、いつまで続くんだ」
弟は57歳。今後、病気や介護の問題が出てくる可能性もあります。実家の修繕費も必要です。姉として助けたい気持ちはあっても、自分たちの老後資金を削り続けることはできませんでした。
涼子さんは、自治体の窓口に相談しました。生活困窮者自立支援制度、生活保護、就労相談、ひきこもり地域支援センターなど、状況に応じて相談できる窓口があることを知ります。
厚生労働省の「生活困窮者自立支援制度」では、経済的に困窮し、最低限度の生活を維持できなくなるおそれのある人に対し、自立相談支援や住居確保給付金、就労準備支援などが行われています。また、厚生労働省は都道府県や指定都市に「ひきこもり地域支援センター」の整備を進め、本人や家族への相談支援を行っています。
浩司さんは最初、相談に行くことを嫌がりました。
「姉ちゃんに迷惑をかけたくない。でも、役所に行くのも嫌だ」
涼子さんは、そこで強く責めることはしませんでした。
「私も全部は背負えない。だから一緒に相談に行こう」
数週間後、浩司さんは涼子さんに付き添われ、自治体の窓口へ行きました。すぐに仕事が見つかったわけではありません。生活もすぐに安定したわけではありません。それでも、涼子さんにとっては大きな一歩でした。
実家についても、弟が住み続けるのか、売却するのか、固定資産税や修繕費を誰が負担するのかを話し合う必要がありました。親がいたころに曖昧にしていた問題が、いま一つずつ現実になっていたのです。
「母は、浩司を守っていたつもりだったのだと思います。でもその先のことを何も決めないまま、私に残されてしまった」
家族を助けたいという気持ちは自然です。しかしきょうだいの生活を一人で抱え込めば、自分の老後まで危うくなることがあります。
必要なのは、冷たく突き放すことではありません。家族だけで抱えず、制度や地域の支援につなげることです。
親が亡くなった後、残されたきょうだいの問題は突然始まるわけではありません。多くの場合、何年も前からそこにあった問題が、親の不在によって表面化するのです。
「私が面倒を見るしかない」と思い詰める前に、誰に相談できるのか、どこまでなら支えられるのかを確認する。その線引きが、自分の生活と家族の関係を守るために必要なのかもしれません。
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