「母さんが何とかしていた」…実家に残された57歳の弟
涼子さん(仮名・66歳)は、定年後、夫と二人で暮らしています。夫婦の年金は月25万円ほど。貯蓄は約2,000万円ありますが、住宅修繕費や医療費、将来の介護費を考えると、決して余裕があるとは思っていませんでした。
そんな涼子さんを悩ませていたのが、実家で暮らす弟の浩司さん(仮名・57歳)です。
浩司さんは若いころに勤めていた会社を辞めた後、短期の仕事を転々としていました。ここ10年ほどはほとんど働いておらず、母の年金とわずかな貯金で生活していました。
母が元気なころ、涼子さんは何度も聞いていました。
「浩司のこと、このままで大丈夫なの?」
母はいつも、こう答えていました。
「あの子もそのうち何とかするでしょう。今は少し休んでいるだけよ」
しかし、その「少し」は長く続きました。
やがて母は体調を崩し、施設へ入居。その数年後に亡くなりました。葬儀や相続の手続きが一段落したころ、涼子さんは実家の現実に直面します。
古い家には浩司さんが一人で残っていました。冷蔵庫には安い総菜とカップ麺。郵便受けには未開封の書類がたまり、固定資産税や水道光熱費の支払いも滞りがちでした。
「これから、どうするつもりなの?」
涼子さんが尋ねると、浩司さんは目をそらしました。
「分からない」
その一言に、涼子さんは言葉を失いました。
総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得約22.2万円に対し、消費支出は約26.4万円で、平均では毎月約4.2万円の不足が生じています。涼子さん夫婦も、自分たちの生活だけでも余裕がありませんでした。
それでも、弟を放っておくことはできません。
「私が面倒を見るしかないの……?」
夜、布団に入ってもそのことが気になって、なかなか眠れませんでした。
