知らない土地の、知らない店に入るより…
企業が取引銀行から経理部長を受け入れている理由のひとつは、「我が社は粉飾決算をしていない」ということを銀行に信じてもらいたいから…かもしれません。自分が嘘をついていないことを信じてもらうのは大変だからです。
銀行は、貸出金利を高くすると危険かもしれません。金利を高くすると客が逃げてしまうこともありますが、それはまだ、金利を儲けるチャンスを逃しているだけだからマシでしょう。「金利の安い銀行に融資を断られた借り手」すなわち借金返済能力の低い借り手だけが借りに来るようになるかもしれません。そうなると、貸出元本をそっくり損するリスクを抱えることになります。
生命保険会社のなかに「健康診断を義務付ける会社」と「義務付けない会社」があると、義務付けない会社には健康診断の結果が悪い人ばかり加入してくるかもしれません。そんなことになると、保険金の支払い事例が続発して大損してしまうかもしれませんね。
全国津々浦々に全国チェーンのハンバーガー店があるのも、「情報の非対称性」と関係あるかもしれません。旅行者は、地元の店が安くて美味しいか否かを知らないので、全国チェーンで食べたほうが安心だ、と思う人も多いでしょうから。
「中古車の取引」を考えてみる
中古車の性能は、乗っている人にはわかりますが、買い手にはなかなかわからない、といわれています。中古車ディーラーであれば、ある程度品質がわかるでしょうから、個人から直接買うよりも中古車ディーラーから買う方が安心でしょう。では、中古車ディーラーがなかったらどうなるでしょうか。
個人から買おうとして「100万円で中古車を買いたい」と呼びかけた場合、集まって来る車はゼロ円から100万円までの価値でしょう。どれを選んでも価格以上の価値はありませんし、平均すれば50万円の価値の中古車が並ぶことになるはずです。そのなかから1台を選ぶと、よほど運がよくないと満足できる車は手に入らないでしょう。「だから中古車の取引は難しいのだ」と教わったときは、納得したものです。
しかし、その後よい方法を思いつきました。集まった売り手に向かって「申し訳ない。予算が1円足りないので、99万9,999円で買いたい」とアナウンスするのです。それを聞いて帰ろうとする人は、100万円の価値のある中古車を持っているはずですから、その人から買えばよいのです。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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