「来週もお願い」毎週かかってくる娘からの電話
「来週の水曜日、陽斗のお迎えをお願いできない?」
長女の由佳さん(仮名・37歳)から電話があったとき、美智子さん(仮名・65歳)は、夫の和夫さん(仮名・66歳)と北海道旅行の計画を立てていました。
二人はともに会社員として働き、和夫さんは65歳まで再雇用を続けました。現在の年金は夫婦合わせて月約33万円。退職金や現役時代からの預貯金も合わせて約5,000万円あります。
住宅ローンは完済しており、退職後は年に数回、国内外を旅行するつもりでした。
「水曜日だけなら大丈夫よ」
美智子さんは気軽に引き受けました。
由佳さん夫婦は共働きで、小学2年生の陽斗くん(仮名)と保育園に通う娘を育てています。これまでも子どもが熱を出したときや、保育園の行事がある日に、夫婦が手を貸すことはありました。
ところが、水曜日の迎えは翌週も、その次の週も続きました。
由佳さんの勤務先で人手不足が続き、退勤時間が遅くなったためです。やがて月曜日と金曜日にも頼まれ、週3回、学校や保育園へ迎えに行くようになりました。
夕食を食べさせ、由佳さん夫婦が帰宅する午後8時ごろまで預かります。帰りがさらに遅くなる日は、孫を風呂に入れることもありました。
「じいじの家でご飯を食べたい」
孫にそう言われると、夫婦もうれしく感じました。
一方で、生活は少しずつ孫中心になっていきました。美智子さんは午後になると買い物と夕食の準備に追われ、和夫さんは送迎のため、夕方に予定を入れなくなりました。旅行の日程も、学校行事や由佳さん夫婦の繁忙期を避けて決めるようになりました。
厚生労働省『2023(令和5)年 国民生活基礎調査』によると、児童のいる世帯は983万5,000世帯で、全世帯の18.1%を占めています。子育て世帯の働き方や家庭事情はさまざまで、身近な祖父母が日常的な支援を担う家庭もあります。
最初に延期したのは、2泊3日の温泉旅行でした。陽斗くんの授業参観と重なり、由佳さんから下の子を預かってほしいと頼まれたためです。
翌年に予約した台湾旅行も、出発直前に孫がインフルエンザにかかり、由佳さん夫婦が仕事を休めないという理由で取りやめました。
「旅行はいつでも行けるから」
美智子さんは、和夫さんにも自分にもそう言い聞かせました。
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