家族仲も悪くないし問題ないですよね?父の死から10年以上、不動産は父名義のまま…複雑化した相続手続きに〈50代次女〉が重い腰を上げたワケ【相続実務士が解説】

家族仲も悪くないし問題ないですよね?父の死から10年以上、不動産は父名義のまま…複雑化した相続手続きに〈50代次女〉が重い腰を上げたワケ【相続実務士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「父が亡くなったのは10年以上前のことでした。家族仲も悪くなかったので、そのうち手続きをしようと思っていたんです」──。そう話すのは、50代のKさんです。しかし、父親名義のまま残された自宅や収益アパート、さらに相続人の中には認知された子もおり、相続手続きは想像以上に複雑な状況になっていました。2024年の相続登記義務化をきっかけに、「このままではいけない」と相談に訪れたKさん。10年以上放置された相続は、どのように整理され、解決へ向かったのでしょうか。相続実務士・曽根惠子氏が、実例をもとに解説します。

 

【提案(ソリューション)】

「今回の相続を解決しながら、次の相続も簡単にする」という視点で提案を行いました。まず自宅については、現在居住している母親とKさんが取得する形としました。住み続ける方が所有することが最も自然であり、将来的なトラブルも防げます。

 

次に兄と姉に対しては、Kさんが代償金を支払う代償分割を採用しました。不動産を共有にすると将来売却や管理の際に全員の同意が必要となり、トラブルの原因になります。代償金によって公平性を確保しながら、不動産の共有を避ける設計としました。

 

また代償金の原資については、父名義の収益アパートを売却した資金を充当する計画を立てました。これによりKさんが多額の自己資金を用意する必要がなくなり、現実的な解決策となります。

 

さらに認知された子については、相続分譲渡証明書を活用し、相続権の整理を行いました。法的な問題を残さず、手続きを円滑に進めることができるようにしたのです。

 

最後に遺産分割協議書を作成し、全員の合意内容を明確に文書化しました。

 

【解決(成果)】

第一に、10年以上放置されていた相続登記を完了することができました。

これにより法的な不安定状態が解消され、不動産を自由に活用できる状態になりました。

 

第二に、認知された子を含めた相続関係を整理できました。

誰にどの権利があるのかが明確になり、ご家族の心理的負担も大きく軽減されました。

 

第三に、不動産共有を回避できました。

収益アパートを現金化することで、公平な分配と将来のトラブル防止を両立することができました。

 

第四に、譲渡所得税を事前に試算し、手取り額を見える化しました。

その結果、相続人全員が納得した上で意思決定を行うことができました。

 

第五に、母親の相続を見据えた資産整理が実現しました。

次の相続では権利関係が整理されているため、手続き負担を大幅に軽減できます。

 

【相続実務士の視点】

今回の事例で重要だったのは、「目の前の相続だけを見ないこと」です。相続の現場では、登記だけ、税金だけ、売却だけという部分的な対応が行われることがあります。

しかし本当に大切なのは、相続全体を設計することです。

 

本件では、

・認知された子の権利関係を整理する
・不動産共有を避ける
・代償金の支払原資を確保する
・税負担を事前に把握する
・二次相続まで見据える

という5つを同時に実現しました。

 

相続の本質は財産を分けることではありません。家族に問題を残さないことです。

 

今回のように10年以上止まっていた相続でも、正しい順序で整理すれば必ず前に進めることができます。だからこそ、相続は早めの準備と全体設計が重要なのです。

 

 

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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