出国税導入後も止まらない資産流出
日本では2015年から、一定額以上の有価証券などを保有する人が海外へ移住する際、その含み益を実現益とみなして課税する「出国税(国外転出時課税制度)」が導入されました。
制度の目的は、株式などを保有したまま海外へ移住し、その後に売却することで日本の課税を回避する行為を防ぐことにあります。
しかし、出国税は移住そのものを制限する制度ではありません。富裕層にとっては移住コストの一つに過ぎず、長期的な税負担軽減効果が大きいと判断されれば、移住を選択するインセンティブは依然として残ります。
日本とシンガポールの税負担格差
世界の多くの国では、所得税は国籍ではなく居住地を基準として課税されます(ただし米国など国籍課税を採用する国も存在します)。
日本では所得税と住民税を合わせた最高税率が55%に達します。一方、シンガポールは国際的に見ても比較的低い所得税率を維持しており、一定以上の高所得者にとっては税負担に大きな差が生じます。
この差は1年単位ではそれほど大きく見えなくても、10年、20年という長期間で考えれば資産形成に大きな影響を及ぼします。
富裕層が移住を検討する理由は相続税だけではありません。むしろ毎年発生する所得税負担の違いこそが重要な判断材料となっています。
富裕層が注目する「キャピタルゲイン非課税」
シンガポールが富裕層や投資家から高い支持を集める最大の理由の一つは、一般的な株式投資によるキャピタルゲインが原則として非課税であることです。
日本では上場株式の譲渡益に対して約20%の税負担が発生します。投資額が大きくなればなるほど、この差は無視できないものになります。
例えば、長年の投資によって数十億円規模の含み益を持つ投資家にとって、税率の違いは将来の資産額を大きく左右します。グローバルな視点で資産運用を行う富裕層が、税制面で有利な国・地域に魅力を感じるのは自然な流れといえるでしょう。
