住宅ローンの「進化」がマンション相場を押し上げてきた
都内のマンションの平均価格が1億円を超えるようになって久しいが、住宅ローンの「進化」が価格高騰に一役買ってきたことは不動産業界の常識だ。その代表例が「ペアローン」と「50年ローン」である。
まず、リクルートが毎年実施している「首都圏新築マンション契約動向調査」によると、2025年のペアローンの利用率は36.4%と、7年前の27.7%から大幅に上昇している。夫婦共働きのパワーカップルがそれぞれローンを組むことで予算が上昇し、相場を押し上げたという構造になっている。
同様に、50年ローンもマンション相場を押し上げるエンジンとなった。住宅金融支援機構が2025年6月に発表した「住宅ローン利用者の実態調査」によると、返済期間が35年超〜40年以内は18.4%、40年超〜50年以内は7.1%であり、合計で25%以上が35年を超える住宅ローンを使っていることになる。利払いを考えると支払総額は多くなるが、月々の支払額を減らすことができるため、これも購入予算を増加させる効果がある。
家を買えるか買えないかは、年収や資産の多寡だけではなく、住宅ローンをどれだけ組めるかの勝負となっている。
家が高くなったから住宅ローンが進化するのか、それとも住宅ローンが進化したから家が高くなったのか、その問いは鶏と卵の関係にもたとえられるほどだが、ペアローンでも50年ローンでも手が届かなくなったいま、家を買うために将来家を売却することが前提となった商品が登場するのは必然なのかもしれない。
売却時の価格が債務を下回った場合の悲惨な老後
最終的に住宅を市場で売却して返済することを想定しているが、もし不動産価格の下落などで売却時の市場価格が債務を下回っていた場合、悲惨なことになる。40歳で借りた場合、75歳にして自宅を手放した挙句、手元に莫大な借金だけが残り、老後の蓄えまで債務返済に使わなければならないというシチュエーションも十分にありえる。
銀行側のリスク管理
もっとも、銀行側もリスク管理には気を配っている。住信SBIネット銀行によると、対象エリアは東京23区、横浜市・川崎市、大阪市に限定されており、対象となる物件も完済時に築年数が65年以内で、担保評価額が1億円以上のマンションとなっている。
つまり、都市部で1億円以上の築年数がそこまで古くないマンションという、値下がりのリスクが少ない物件と、そうした物件を購入できるハイスペックな人々のみを対象としているのだ。一般的な自動車の残価設定ローンのように、幅広い層が手軽に利用できる性質のものとは一線を画している。
「病める東京」が生んだ、人生を賭けたギャンブルの行方
今後、ハイブリッド型が普及すれば住宅市場はどうなるのか。
前述のA氏は「都心と郊外の格差が広がるだろう」と予測する。湾岸タワマンのように、1億5,000万円を出しても皆が欲しがるような高額物件には、ハイブリッド型を使った購入希望者が殺到していっそう相場を押し上げる一方で、4,000万円で購入できるような郊外のマンションには影響がないため、さらに二極化が加速するという見立てだ。
もっとも、その湾岸タワマンも皆が値上がりを期待しているからこそ現在の相場となっているわけで、なにかしらのショックで相場そのものが崩れないという保証はない。
人生を賭けたギャンブルともいえるが、そうでもしないとマイホームを持てないという、病める東京のマンション相場を象徴した現象だともいえそうだ。
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